尾関高文『ザ・ギース尾関の「娘の絵を完コピ!」おえかきキャラ弁』/見れば笑いがこみあげる、父親が作るキャラ弁の数々!

「こんなお弁当を作って」と4歳の娘が描いたキャラクターを、お笑い芸人の父親が完全再現! 見ているだけで笑いがこみあげる、楽しいエッセイ付き写真集を紹介します!

【ポスト・ブック・レビュー この人に訊け!】
森永卓郎【経済アナリスト】

ザ・ギース尾関の「娘の絵を完コピ!」おえかきキャラ弁
ザ・ギース尾関の「娘の絵を完コピ!」おえかきキャラ弁 書影
尾関高文 著
永岡書店
1200円+税
装丁/黒門ビリー(FLAMINGO STUDIO INC.)

見つめているだけで笑いがこみあげ心の底から楽しめる

 本の世界では、ときどき想像を絶する作品に出合うことがある。本書もその一つだ。
 本書は4歳の娘のために、父親が作った弁当のエッセイ付き写真集だ。ただし、その弁当は普通ではない。娘が、「こんなお弁当を作って」と描いたキャラクターを、完全に再現した弁当なのだ。幼児が描く絵だから、当然、滅茶苦茶な絵になる。それをチーズや海苔などを使って、完コピする。その再現性の高さは、驚くばかりだ。
 著者であり、お弁当の作者でもある尾関高文氏は、最近急速に人気を高めているお笑いコンビ、ザ・ギースのボケ担当だ。若手芸人の生活は厳しく、共稼ぎで生活を支える妻の負担を少しでも軽くしようと、娘の弁当作りを始めたのだそうだ。
 著者に絵心があったから、そうした取り組みを始めたと思われるかもしれない。だが、私は逆だと思う。もし絵心があったら、娘の絵の特徴をつかんで、娘の絵とは、異なる作品を作っていたはずだ。似顔絵の名手が、極端なデフォルメをして、まったく本人とは異なる似顔絵を書いてしまうのと同じだ。尾関氏のお弁当は、逆で、一切のデフォルメがない完コピだ。
 絵心が要らないということは、こうしたキャラ弁は誰にでも作ることができるということになる。尾関氏は30分程度で作ってしまうようだが、初めてでも、一時間くらいあれば作れそうだ。問題は、どういう素材をどのように使えばよいかなのだが、そのノウハウは、本書に収められた豊富な作品のなかに詰まっている。だから、もし機会があったら、孫娘のために、一度こんなキャラ弁作りをやってみようかなと思ってしまった。
 いずれにしても、本書の一番の特長は、頭を使わずに、心の底から楽しめるということだ。お弁当作品を見つめているだけで、笑いがこみあげてくるし、ほのぼのとしたエッセーも楽しい。子供が描いたドラえもんに、大人の事情で「みんな大好き青いロボ」というタイトルがつけられているのも、ご愛嬌として、許せてしまうのだ。

(週刊ポスト 2019年5.17/24号より)

初出:P+D MAGAZINE(2019/11/06)

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