週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド vol.78 紀伊國屋書店福岡本店 宗岡敦子さん

時代小説は、いつも緊張してドキドキしてしまう。私自身が歴史に詳しくないので、どうしてもハードルが上がってしまうのだ。そのため読む機会も少なく、自分の力不足に毎回打ちひしがれている。
ただ、今回ご紹介する『木挽町のあだ討ち』は、「時代小説が得意でない」という自分を打ち消したいほど驚きの物語だった。
時代は江戸時代。ある雪の降る夜、芝居小屋のすぐそばで、若衆・菊之助によって、みごとな仇討ちが成し遂げられる。父親を殺めた家来を斬り、その鮮やかな雄姿は多くの人々に目撃され、木挽町の語り草となった。
二年後、ひとりの侍が仇討ちを目撃した人々に詳細をたずねにくる。現場に居合わせた人々が語る「木挽町のあだ討ち」の真相とは……。
読後も、熱い気持ちが冷めず、勇んでオススメポイント3点にてご紹介させていただきたい。
オススメポイント①
時代小説が得意でない方でも絶対大丈夫! まさに私がその証人。実はこの物語、さまざまな謎が多い。読み進めるとさらに深まる。ミステリが好きな方は、相性バツグン! 時代小説とミステリの絶妙な融合に震えた。
オススメポイント②
それぞれの人々が見た「木挽町のあだ討ち」は、どんなものだったのか!? 仇討ちをした菊之助、討たれた作兵衛はどんな人物だったのか⁉ 多くの証言から浮き彫りになる事実に目が離せない! そして、関係者に仇討ち事件を聞き回っている侍は何者なのか⁉ こちらも見逃せない!
オススメポイント③
武士とは一体何なのか!? 矜持や信念が確立している武家社会。自分の意思など関係なく、礼儀や格式を重んじることが最重要。武士として生きることを選んだ人々の、心の苦しみや葛藤に、私の心も重なった。人として、身分の前に大切にしたい心の在り方が生きている。
時代小説が得意でない私が、本作をご紹介するという事で、ここまで書きながら非常に緊張している。本当に動悸と手汗がひどい。
本来の自分なら避けるジャンルだが、この物語を多くの方に読んでほしいという気持ちが勝り、書かせていただいた。
読後の今も、最後に見た驚きの光景がずっと胸に残っており、熱い血潮が体全体を駆け巡るような興奮が止まらない。
今も昔も変わらない、人としてずっと大切にしたい心を、教えていただいた。
私はこの作品に出逢えて、最高に幸せな気持ちで溢れている。
時代小説を普段読まない方、得意でない方も、騙されたと思ってぜひ! この震えるような感動を体感してほしい!
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