週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド vol.83 広島蔦屋書店 江藤宏樹さん
『102歳、一人暮らし。哲代おばあちゃんの心も体もさびない生き方』
石井哲代
文藝春秋
この本は、102歳の哲代おばあちゃんの一人暮らしの日常を描いたものです。中国新聞の記者がおばあちゃんのもとに通い、その日々の出来事を一人語りで日記風にまとめて連載していたのですが、広島では大人気です。というのも、おばあちゃんの言葉が本当に前向きで若い私達にも、ものすごく刺さるのです。
中でも一番私の心に刺さった言葉がありました。いつも朗らかで笑顔が本当にかわいい哲代おばあちゃんですが、やはり老いると、どうしてもできないことも増えてくるし、心がふさぐ日だってあるみたいなのです。でも、そんなときは、自分を励ます名人になって、心をご機嫌にしておくそうです。「人を変えることはできませんが、自分のことは操作できますけえね」とおっしゃっています。私達の悩みってほとんどが人間関係に基づくことが多いですよね。そんなとき、つい相手に非を求め、相手に変わって欲しいと思ってしまいますが、自分を変えることで、良くない気持ちを抑えるというのは、流石ですよね。
哲代おばあちゃんはもともと小学校の教師をされていて、旦那さんも小学校の教師で、そこで出会って結婚されました。子どもには恵まれなかったので、83歳で旦那さんを見送った後は一人暮らしをされています。今は尾道市に暮らしておられるのですが、姪やご近所さんや教え子などがしょっちゅう遊びに来られるそうです。
おばあちゃんの元気の秘訣は、美味しくご飯を食べることだったりします。後は楽しく歌ったり笑ったり、たまには畑仕事をサボって一日ぼーっとしたり。読んでいるとこちらがほっとしてしまいます。
「この本は、自分が歳を取って、終活のようなことを考え始めてから読もうかな」と言う知人がいたのですが。私は、「いや違うのですよ、今すぐ読んでください! 絶対に早く読んだほうがこの先の人生をらくに楽しく生きられますから」と強くおすすめしておきました。もっともっと若い、例えば学生さんにも読んで欲しいと思っています。102年も生きるとこんなに生きるということがわかって……いやいつまでたってもわからないのかもしれませんが、断然人生を楽しんでいらっしゃいますし、学ぶところが本当にたくさんあります。とても読みやすい本なのでたくさんの方に読んで欲しいと思います。
あわせて読みたい本
『超 筋トレが最強のソリューションである 筋肉が人生を変える超科学的な理由』
Testosterone、久保孝史
文響社
102歳までとは言いませんが、長生きするためには健康が大事です。ではどうすれば健康になるのか、それは筋トレなのです。実は、自分が嫌いだったり、自信がなかったり、モテなかったり、病み気味だったりというのはすべて筋トレで解決してしまうのです。それをちゃんと科学的な根拠に基づいて説明してくれる本です。私も軽いものですが毎日筋トレをしています。体つきが変わってくるのが目で見てわかりますし、それを見ていると自分が好きになりますし、テンションも上がって頭が冴えてきますよ!
おすすめの小学館文庫
『戦中派焼け跡日記』
山田風太郎
小学館文庫
哲代おばあちゃんの日記には、最近ののんびりした生活が書かれていますが、哲代おばあちゃんは大正の生まれです。今でこそあんなに朗らかで楽しい毎日を送っていらっしゃいますが、もちろん戦争も経験しています。当時医学生だった山田風太郎の日記は、あの悲惨な戦争中の事を知ることができます。合わせて読んで欲しい1冊です。