【栃木県民マンガ】負けるな!ギョーザランド!! 第6回 栃木の“穴”は奥が深い! まんが/いちごとまるがおさん 監修/篠﨑茂雄

先史時代の横穴式墳墓に銅山の採掘坑、石材の採掘所など、栃木にはたくさんの穴がある。なかでも長岡百穴古墳は、郷土のヒーロー・藤原秀郷や百目鬼伝説にも関係しているから、〝栃木マスター〟をめざすなら必ずおさえておきたい。
では、チャオズたちといっしょに、栃木の穴を探りに行こう!

栃木名物といえば餃子にかんぴょう。
だが、それだけではないぞ。なんと、妖怪の数も指折りなのだ!
まず、今回の漫画に登場する、100の目を持つ百目鬼(宇都宮)、
那須の殺生石に封じ込められたという金色の九尾の狐
まるでピカチュウ、雷の妖怪・雷獣(日光など)、
信心深い人は助けてくれる天狗(鹿沼など)、
そして益子など多くの地域に伝わる河童伝説……。
地域の昔話や民話になっているこれらの妖怪譚は、
面白おかしいだけじゃなくて、現代人への教訓にもなっているから
時間のあるときにネットや図書館などで調べてみてくろな。

マンガ中の記号(※1)などは、マンガのあとに出てくる用語解説「餃子国の歩き方」の番号と対応しています。
 
 








 
 

(※1)吉見百穴


 6~7世紀に掘られた横穴式の墳墓。戦時中に破壊されたものもあるが、219の穴が現存している。でも、名称を「吉見二百穴」にする予定はないらしい。
 明治時代、この穴を巡って東大の先生同士が、「墓かコロボックルの住居か」で大論争を展開。でも、エライ先生が「コロボックルの住居」説を大真面目に唱えて、それを信じる人がたくさんいたってことにビックリ。明治時代って、ロマンがあったんだな~。
 この不思議なスポットでは、仮面ライダーやウルトラマンシリーズの撮影が行われたこともあるそうな。天然記念物のヒカリゴケが自生しているというし、もし仮に万が一埼玉に行くことがあったら、「埼玉のカッパドキア」を冷やかしてみたら? 無理に行く必要はないけど(笑)。

(※2)長岡百穴古墳


 JR宇都宮駅から北に7kmあまり走ると、道路の北側に、穴がボコボコあいた崖が見える。7世紀前半、古墳時代後期の「長岡百穴古墳」だ。「百」といってるけど、現存する穴ぼこは52。ちょっと盛りすぎのような気もするが、ふだん奥ゆかしい下野人が、珍しく大ぼらを吹いたと思って、おおらかに捉えてほしい。
 まわりは観光地として整備されているかと思いきや、あるのは無料駐車場くらい。なにせ、古墳のまわりは畑になっているしなぁ。
 とはいえ、クルマがビュンビュン通る国道119号線(宇都宮環状道路)以外はのどかなところ。周辺には大小いくつかの古墳群や野仏、歴史ある神社などがあり、散策するにはうってつけだ。50万都市・宇都宮に残された古の散歩道、ぜひ寄ってくろな。

(※3)百目鬼


 茨城県のヒーロー・平将門を討ち取ったことで知られるわれらが藤原秀郷(別名・俵藤太)は、宇都宮の北のはずれの兎田という場所で、目が100個ある巨大な鬼と遭遇。得意の矢で射ると見事に命中し、鬼は逃げていった
 鬼は、それから400年ほど長岡百穴で養生し、ようやく癒えたので娘の姿になって宇都宮の本願寺へ。そこで火事を起こしたり、住職にケガをさせたりといたずら三昧をしていたが、徳の高い上人が住職になると、娘の正体はすぐにばれ、説諭されて改心。角を折り、爪を取って上人にあげた――というのが宇都宮に伝わる百目鬼伝説。
 単なるお話だろうって? いやいや、寺には鬼の爪が残されているのだよ。え、怪しいから鑑定させろ? ば、バチあたりな!

(※4)足尾銅山


 発見は江戸以前に遡る足尾銅山。寛永通宝などの貨幣や日光東照宮、江戸城などの銅瓦などに使われた足尾の銅は、一時衰退した時代もあったが、戦後まで採掘が続けられていた。20世紀の初頭には日本の銅の産出量の40%を占めていたってーから、すごいべさ。
 ただ、規模がでかいから周辺地域への影響もものすごく、排煙、排水などに有毒物質が含まれていたために、山は禿げ、川は魚が棲めなくなってしまった。で、佐野出身の衆議院議員・田中正造(1841~1913)が国会でこの問題を激しく追及。議員辞職後の1901年には、天皇陛下に直訴しようとして失敗するけど、鉱毒問題は世間の注目を集めたんだわ。田中正造のことは、わりと最近まで小学校の教科書にものっていたから、みんな知ってるよね?
 1973年に銅山が閉山になったあと、1980年に銅山の歴史を伝える施設「足尾銅山観光」がオープン。坑道見学もできるので、大人の社会見学に是非来てくろな。

(※5)大谷資料館


 大谷石は、古墳時代の石棺をはじめ、磨崖仏、石垣や蔵、旧帝国ホテルなどにも使われた、ザ・高級建材だ。火にも強いし、防音もバッチリ。無敵だどな。
 採掘のためにいくつもの穴が掘られているのだが、そのうちの一部(もちろん、採掘済のところ)を資料館として公開。広さは2万㎡、高さは最大30mという巨大な空間で、古代の神殿にしか見えねぇんだこれが。
 なかには第二次世界大戦時、地下の秘密工場として利用されたものもあり、四式戦闘機「疾風」などが製造されたというが、いまはコンサートや映画撮影などに平和利用されている。
 それにしても、この地下の大空間は一見どころか二見、三見の価値あり! ことによると、栃木が誇る世界遺産・日光東照宮よりおもしれぇかもしんねぇぞ。

(※6)どうくつ酒蔵


 那須岳からの伏流水で仕込んだ酒を1849(嘉永2)年からつくり続けている島崎酒造(ブランド名は「東力士」)。純米吟醸から普通酒、カップ酒など各種ラインナップされているが、なんといってもユニークなのはやはり洞窟で貯蔵した古酒「熟露枯(うろこ)」だべなぁ。
 熟成の期間が長くなるほど透明だった酒が琥珀色になり、味わいが深くなる。5年もの、10年もの、20年ものなどのほか、1991年以降各年の商品を買い求めることもできる。さらに、洞窟でお酒を一定期間保存してもらうこともでき、たとえば子どもが産まれたときに契約して、20年後に親子で熟成酒を酌み交わすことも可能。おもしれぇなぁ。
 新潟や灘(兵庫)のように全国的な知名度はないかもしれないが、米作りが盛んで、山からの清流にも恵まれている栃木は、おいしい酒の隠れ名産地だ。また、独自に杜氏を育成しており、30~40代の若手が「下野杜氏」として活躍中
 栃木の酒、これからは目が離せねぇぞ!

■プロフィール

まんが:いちごとまるがおさん

田んぼに囲まれた田舎で創作活動を続ける、ひきこもりのおたく姉妹ユニット。栃木県佐野市在住。
姉の小菅慶子(代表)は1985年生まれ。グラフィックデザインから漫画、動画編集、3DCGまでやりたいことはなんでもやる。通信制高校の講師も。趣味はゲーム、ホラー映画、都市伝説。

監修:篠﨑茂雄

1965年、栃木県宇都宮市生まれ。大学・大学院で社会科教育学(地理学)を専攻したのち、県立高校の社会科教員を経て、現在は博物館に勤務。学芸員として、栃木県の伝統工芸、伝統芸能、生産生業、衣食住等生活文化全般(民俗)の調査研究、普及教育活動を行う。
著書は『栃木「地理・地名・地図」の謎』(じっぴコンパクト新書)、『栃木民
俗探訪』(下野新聞社)など。

■作者よりひとこと

■今回のテーマ「酒」

・いちごとまるがおさん
20代は、お酒の適量がわからず、翌日二日酔い……一日中寝込む、みたいなことをしまくっておりました(笑)。ずっと日本酒が好きで、飲んできましたが、いまはレモンサワーブームがなぜか来ています。
お酒は好きなので、死ぬまで楽しく嗜めるように、これからも適量飲んでいきたいですね!

・篠﨑茂雄
大の日本酒党で、最近の旅の楽しみは自分好みの日本酒を発掘すること。いままで日本全国500銘柄以上は飲んでいるかも。地元民としては、冬ならばサガンボの煮付け、あるいはシモツカレをつまみに飲むのが最高の組み合わせでしょう。ただ、栃木の酒は他県にはあまり出回っていないので、こちらに来てご堪能ください。

初出:P+D MAGAZINE(2023/02/24)

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