2021年啓文堂書店文庫大賞で佐藤正午さん『永遠の1/2』が第1位に!

佐藤正午さん『永遠の1/2』が啓文堂書店文庫大賞第1位に!

 京王線・井の頭線沿線地域を中心にチェーン展開する啓文堂書店で、毎年この時季に催されている「啓文堂書店文庫大賞」。10月のフェアに今年は11作の候補が各出版社からノミネートされ、啓文堂書店全店で展開していただきました。
 そして──
 本日発表された「2021年啓文堂書店文庫大賞」第1位に、佐藤正午さんの『永遠の1/2』(小学館文庫)が選ばれました! 

 
『永遠の1/2』は、直木賞作家・佐藤正午さんのデビュー作です。
 第7回すばる文学賞を受賞したこの作品には、当時の応募規定「原稿用紙250枚以内」のところへおよそ700枚の応募作で受賞に至った、という伝説的なエピソードも残されています。選考会では、むしろ規定の方こそ問題だ、といった意見まであったそうです。
 また『永遠の1/2』は後年、時任三郎さん、大竹しのぶさんらの出演で映画化(監督:根岸吉太郎さん)もされています。

 物語は、「失業したとたんにツキがまわってきた」とうそぶく〝ぼく〟が主人公。「西海市」にすむ彼は27歳の年の暮れに退職届を出して以降、ツキを頼りに何もかもうまくいくかに思われます。ところがその頃から、街でたびたび別人と間違われ、厄介な相手にからまれ、ついには不可解な事件に巻き込まれてしまいます。どうやら自分と瓜二つの男がこの街にいるらしい──。

 2016年に新装版として小学館文庫から刊行された本作の巻末には、佐藤正午さん書き下ろしの「あとがき」を収録。
 作家はそこで、デビュー作についてこう綴っています。

 どんな小説家にも、一つだけ、アマチュアとして書いた小説がある。ないと始まらない。その小説が人目に触れ、本になるとデビュー作と呼ばれ、書いた人は小説家と呼ばれるようになる。
  (中略)
 初めて小説をひとつ書きあげること、そして書きあがった小説が縁もゆかりもない他人に読まれること、その結果、小説を書いた人の立ち位置は変わる。境界線をこちら側から向こう側へ、あるいは、向こう側からこちら側へ、どっちでもいいが、なにしろ跨ぎ越した新しい自分を見出すことになる。
(なるだろう。たぶん)


 直木賞受賞作『月の満ち欠け』(岩波書店)や、今年映画化されて話題となった山田風太郎賞受賞作『鳩の撃退法』も、佐藤正午さんがこのデビュー作で「新しい自分を見出す」ことがなかったら、きっと生み出されなかったでしょう。
 それが、『永遠の1/2』です。

 クリスマスプレゼントや年末年始の読書タイムにも、おすすめの一作です。
 京王線・井の頭線沿線にお住まいのかたは、ぜひ啓文堂書店に足をお運びください。


2021年 啓文堂書店文庫大賞
*第1位*

永遠の1/2

『永遠の1/2』
佐藤正午
小学館文庫


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