◎編集者コラム◎

『ショートショート千夜一夜』田丸雅智


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 あなたの夏祭りの想い出は何ですか? 太鼓とお囃子の響き、宵闇に浮かぶ提灯の明かり、焼きそばの香ばしい匂い、舌の上でとろけていく綿あめ……。一歩足を踏み入れたらそこは異世界、魔法のようなできごとが起きても不思議ではない空間にドキドキした経験は、みなさんお持ちなのではないでしょうか。

 そんな気持ちを蘇らせてくれるのが本書、『ショートショート千夜一夜』です! 舞台は多魔坂神社。ある日は夜祭が行われ、ある日は蚤の市が立つ。集うのは、妖しい店とちょっと変わった品々、そしておかしな客ばかり……。

 作品の映像化や書き方講座の開催など、多方面で活躍されている ショートショート作家・田丸雅智さん の紡ぎだす20篇の風景を、ここで少しご紹介しましょう。

 看板には「金魚すくい」ならぬ「人魚すくい」の文字。好奇心ですくった人魚を飼い始めたものの、みるみるうちに成長してしまって……(「人魚すくい」)/射的の屋台を訪れたおじさんは、おもむろにコルクを鼻に詰めはじめた。「人呼んで、鼻ガンマンさ」コルクは次々と的を打ち落とす。そこへ現れたゴロツキどもは……(「鼻ガンマン」)/夜な夜な遊び歩いていたスタイル抜群のエリカはある日、モデルにスカウトされた。念願の芸能界入りに喜ぶエリカだったが、ある日突然行方不明に……(「ラムネーゼ」)/夕陽の粉を混ぜて焼いたお菓子、夕焼き。そこには、人の思いが映し出されるという。幼い少年と少女がそこに見た風景とは?(「夕焼き屋」)──どこか懐かしく、クスッと笑えたり、ほのぼのしたり、ちょっとゾクッとする怖さがあったり。不思議で愉快な作品群は、単行本刊行時、全国の書店員さんにも絶賛いただいたものばかりです。

 特に巻頭の「燈明様」、掉尾を飾る「さくら隠し」は、お祭りの非日常空間へ飛び込む高揚感が凝縮されていて、担当者もとくにおすすめしたい作品です。

 さらに本書にはもう一つの読みどころが。それは 漫画家・しりあがり寿さん による「あとがきの夜」です。「解説をお願いします」と依頼したところ、「普通の解説ではねぇ……」と、しりあがりさんらしいユニークな作品を仕上げてくださいました。本書の解説でもあり、虚実交えたショートショート作品でもあるという、唯一無二なページに、著者の田丸さんも「感動です!」の声。こちらもぜひご覧いただければと思います。

──『ショートショート千夜一夜』担当者より

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