◎編集者コラム◎ 『森から来た少年』ハーラン・コーベン 訳/田口俊樹

◎編集者コラム◎

『森から来た少年』ハーラン・コーベン 訳/田口俊樹


ハーラン・コーベンの文庫

「コーベンさん、今回はこう来ましたか! いやもうワイルドが……」
「そうなんですよ、ワイルド、かっこよすぎません? 萌えキャラじゃないですか! コーベンさんってこんなことも出来るんですねえ」

 装丁の打ち合わせをしながら、原稿を読み終えたデザイナーと編集の女二人で顔を見合わせてにやけてしまったのは、ハーラン・コーベンの新作『森から来た少年』の主人公ワイルドがあまりに魅力的だったから。
 コーベンさんはアメリカはもとよりヨーロッパでも高い人気を誇るエンタメ界の巨匠。『忽然と』『イノセント』などなど、最近は過去作品が次々に Netflix で映像化されているので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。
 そんな彼の新作『森から来た少年』も、一昨年発売するやいなや、アメリカの主要メディアのベストセラーリストで軒並み1位を獲得、イギリスやオーストラリア、オランダなどでも上位にランクインした大ヒット作です。

 コーベン作品の大きな特徴といえば「ツイスト」。ひねりの効きまくったプロット、先が読めない、翻弄に次ぐ翻弄。やっと様々な伏線が回収されてホッとしたのも束の間、最後の最後にまたまた度肝を抜かれるようなどんでん返し。それなのに、エピローグまで読み終えるとなぜか清々しい気持ちで本を閉じられる――もちろん本作でもそれは健在です。『森から来た少年』はその面白さに加えて、主人公二人のキャラクターが圧倒的にいいんです! 特に男性主人公ワイルドは、本国のメディアでも「コーベン作品史上最高のキャラ」と大評判。で、冒頭ご紹介したやりとりになったわけです。

 姿を消した女子高生の行方を追う主役コンビの一人は、泣く子も黙る強烈おばあちゃん弁護士のヘスター。前作『ランナウェイ』にも登場(ちなみに本作は、この『ランナウェイ』と話が並行して進んでいるという設定です)したこのキャラの魅力は、どんな論戦相手もぐぬぬと黙らせる口撃力、どんな圧力にも負けない鋼のメンタル、困った人を放っておけない男前な性格。にもかかわらず、恋に落ちるとデートに何を着ていくか悩みそわそわしてしまう乙女な一面もあり、ギャップ萌えしてしまうこと請け合い。

 そしてワイルド。幼い頃に発見されるまで独り森で育ったミステリアスな男。危険察知、防衛本能など現代人が失った野性の力に長け、幼少期に時々森から出て留守宅に忍び込み、テレビ番組を観て言葉や文字を習得したほど抜群に頭が切れる。発見されてからは里親に育てられ、やがて傭兵となり、退役後は森のカプセルハウスで暮らしつつ調査員をしています。性格的にはマッチョとは正反対、寂しい女性に寄り添い孤独を分け合う優しさもあり、故にモテる。なのに、野生生活の名残で他人と一緒には眠れない繊細な面も――どうです、これが萌えずにいられるか、と。

 本作の解説を書いて下さったのは、コーベン作品のファンで、翻訳ミステリを愛読している俳優・エンタテイナーの井上順さん。「グッモー!」で始まる毎日更新の Twitter でも、愛読書をたびたび披露しています。その井上さんが「私が若かったらやりたい役」と惚れ込んだワイルド、井上さんのミステリ愛溢れる軽妙な解説とともに、ぜひ本書を手に取ってお楽しみください! 緑を基調にした美少年ワイルドのカバーが目印です!!

──『森から来た少年』担当者より

森から来た少年

『森から来た少年』
ハーラン・コーベン 訳/田口俊樹

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