ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第101回

ハクマン第101回
今年も確定申告の
時期がやってきた。
インプラントをおすすめしたい。

だが、インプラントに関しては正直保険適用にしてくれても良いのではないかと思う。
最近、歯は他の健康にもダイレクトに影響するという説が有力であり、インプラントと入れ歯では認知症の発生リスクが変わるとも言われている。
つまりインプラントに保険を適用しないことで、他のビョウに係る保険が増えるだけになるかもしれないということだ。
病気予防という点で歯科治療はちゃんとやらせた方が良い。

さらにインプラントの利点はそれだけではない。
インプラントは歯茎にネジを埋め込むというサディズムにあふれた治療なのだが、そのネジは本体を煮たり焼いたりしても残るらしい。

昔、被害者の遺体が全く発見されない事件が起こったが、警察の執念の捜査により、下水からインプラントのネジが見つかり、そこから身元が特定、犯人が逮捕ということがあったらしい。

つまりインプラントを入れている私もいつ殺害され、長時間鍋で煮られて下水に流されても安心ということだ。
警察が私のためにわざわざ下水に入ってくれるのかという問題はあるが、将来身元がわからなくなりそうで不安だ、という人はインプラントを入れておいても良いのではないか。

だが今年は残念ながらインプラント治療もしていない。せめて「F」の一文字ぐらい戦略的に入れておけばよかった。
よって今年は追納の可能性が高く、ますますやる気にならない。
しかし唯一今年は「セルフメディケーション減税対象にパブロソが入る」という希望がある。

セルフメディケーション減税とは市販薬でも一定の金額を超えると税控除の対象になるというシステムである。
パブロソはカローラ級に派生が多く、中川に言わせれば「全部同じじゃないですか」かもしれないが、パブプロはAがないから今日はSでいいやとはならない。
漫画だってAのハットリくんがないからFのミノタウロスの皿でいいや、とはならないだろう。

他のパブが対象に入っている中、私愛用のパブは何故かずっと入っていなかったが、今年の申告からめでたく対象となった。

これで還付すらあり得ると思っているのだが、大量のパブ領収書を夫の知り合いの税理士に渡して良いのか、という問題はある。
ウマ娘にハマっている時、短時間に連続して「¥10,000」が引き落とされている明細を送るなど、事件性のある資料を提出してきてはいるが、今回はさらにわかりやすくビョウの匂いがする。

 
カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。

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