ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第101回

ハクマン第101回
今年も確定申告の
時期がやってきた。
インプラントをおすすめしたい。

おそらく顧問料は相場よりかなり安いとは思うのだが、やはり身内関係者に依頼すべきではなかったと今更後悔している。

何故夫の知り合いに頼むことになったかというと、私が毎年税金が高いと怒っているくせに白色申告をしているため「だったら青色でやればいいじゃないか」「そんなの私にできるわけがない、舐めているのか」という会話を90歳超え夫婦のように繰り返してしまい、業を煮やした夫が知り合いの税理士を紹介してきたというのが経緯だ。

もしそれがなかったら、今も「国推し強火」の証である白色の申告書で気風良く税金を納め、他の国担どもに差をつけていたと思うので、良いきっかけだったとは思うが、どうせ頼むならもっとしがらみがなく、そして漫画家という人種に慣れた税理士に依頼すればよかったと思う。

弁護士でも離婚問題に強かったり、風俗で揉めた時には当弁護士におまかせなど、得意不得意があるらしいので、税理士にも職業により得意不得意があるのではないか。

おそらく漫画家を得意としている税理士は「何も言わなくても2月中には資料を出してくるだろう」という甘えを捨て去った面構えをしているはずだ。
おそらく、年の初めに45リットルのゴミ袋を渡し「今年発生したものは全部この中に入れて渡せ」と言っているだろうし、半分はリアルゴミだったとしても眉一つ動かさないはずである。

思えば会社員時代、会社にも顧問の税理士はいたが、こちらが客でも向こうの方が「先生」扱いであり、帳簿の入力も領収の整理も全部こちらで行い、まとめたものを渡すという形であった。

だがおそらくそれが普通なのだろう。そうだとしたら漫画家の顧問は割に合わない仕事だと言える。
漫画家専門どころか、銭湯が入れ墨の人を出禁にするように、漫画家はお断りの事務所もあるかもしれない。
それを考えれば引き受けてくれただけでもありがたいことであり、資料も早めに出さなければいけないとは思っているが、現在「8月」で止まっている通帳を記帳しにいくところで躓いている。
現在気温的に外に出るのは難しい。もう少し暖かくなる、3月上旬以降ぐらいまで待っていただければ幸いだ。

「ハクマン」第101回

(つづく)
次回更新予定日 2023-2-25

 
カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。

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