ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第118回

「ハクマン」第118回
Xは治安が悪いが、
なぜかネタバレに関しては
紳士的である

そもそもネタバレというのは見るつもりはなくても不意に目に入って来るものであり、キャラの名前を Google 検索に入力しただけで「〇〇 死亡」という親切極まりないサジェストによるネタバレを食らったこともある。

ネットをやっている以上思いがけずネタバレを踏む可能性はあるので、絶対にネタバレを踏まず無垢の巨人ぐらいキレイな瞳で成り行きを見守りたいなら、周辺の通信機器を全て破壊するぐらいの自衛は必要なのかもしれない。

しかし、当然こちらが不意のネタバレをする側になることだってある。今後は人の楽しみを奪わないためにも、軽々しく「犯人はヤス」などとつぶやかないようにしたいと思う。

ただ、Xは世界一汚く治安が悪いSNSとしてギネス審査中だが、何故かネタバレに関しては「下痢便は流すが人が即死するような毒は流さない」という紳士的な面があり、話題作のストレートなネタバレポストなどはあまり見かけたことがない。

おかげで、私は結局君たちはどう生きたのか、あの鳥は何だったのか一切知らないし、進撃の巨人についても、巨人は何故でかいのかなど、全く知らないままストーリーを新鮮に楽しむことができている。

「どうせ見ないだろうから」という理由で有名作のあらすじをウィキペディアで読みがちだった私だが、進撃の巨人のように突然見る気になる可能性もあるので、今後は楽しみを半減させないためにも、あまり有名作の知識は入れすぎないようにしようと思う。

何よりキャラ萌えクソなので、推しキャラが死ぬとわかったとたん「俺がこれ以上読むことにより、推しが死んでしまう」と、そこで撤収してしまう恐れがある。

やはり、結末を知らないから人は最後まで見ようとするのだ。推しの死が「結末」になってしまう読者もいるのである。

(つづく)
次回更新予定日 2023-11-10

 
カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。

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