ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第132回
漫画は読まれる率が高いし
目をみはる展開だったりする。
当然差別表現にも厳しく、悪徳政治家のイメージ図をハゲたおっさんにしたところ「ハゲさせないでくれ」と修正が入った。
確かに、青少年たちに「ハゲてるおっさんは悪」もしくは「悪いことをしたからハゲた」と誤解を与えたら大変だが、逆にハゲを腫れ物扱いしすぎじゃないだろうかとも思った。
しかしギャラが良いので諾々と毛を増やした。原稿料の中におっさんの毛も含まれていると言われたら反論の余地がない。
おかげで、お子様でも安心して読める岩井のレーズンみたいな漫画を描くことができたのだが、逆にパンチが見当たらない作品になったとも言える。
しかし、子供向け学習雑誌に描くともれなく作家性が殺されるというわけではない
実は私も中学生の時このゼミをやっていたのだが、その時はしりあがり寿先生が漫画を連載しており、しりあがり寿先生としか言いようがない漫画が掲載されていたのである。
私が中学生の時と現在ではコンプラ意識がまるで違うとは思うが、中学生向け学習誌の制約を全て潜り抜け、もしくは編集の修正を全部無視して、作家性溢れる作品を描いていたのはさすがである。
それに比べると私は自分らしさみたいなものは出せなかった。しかし掲載誌はジャンプではなくあくまで学習雑誌だ。
呪術廻戦の隣にこれが載っていたら中学生読者もお冠だろうが、学習という決してテンションの上がらない行為の息抜きとして私の漫画を読んでもらえたなら幸いである。
また学習雑誌には「使いまわしてもらえる」という利点がある。
諸事情により、小学校や中学校を留年する者や、小学3年生向け学習誌をリピ購読し続ける好事家もいるかもしれないが、学習誌の読者は1年でほとんど総入れ替えになるので、去年と同じ漫画を載せてもそんなに文句は言われないのだろう。
再録される場合も再録料がもらえるので極めて美味しいのである。
そんなわけで学習誌の仕事は常に募集している。もちろん少年少女たちのオアシスになりたいからだ。
(つづく)
次回更新予定日 2024-6-12