ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第137回
「要:コミュ力 捨:心」と
書かれている可能性がある
食ったパンの枚数より、担当に出した殺害予告回数の方が多いでおなじみの私だが、今までついた担当はほぼ全員編集者としての能力は兼ね備えていた。
ならば何故こんなに担当への文句がつきないのかというと、残念ながら「倫理観」は編集者の必須項目に入っていないのである。
むしろ多少人格的にパスってないと、著しく社会性に欠ける人間と暴力を用いずコミュニケーションを取るのは困難なので、編集者の募集要項には「要:コミュ力 捨:心」と書かれている可能性がある。
特に編集者のコミュ力は極めて高く、私を相手にほぼ全員が「初対面でも無言を発生させない」という神業チャレンジに成功しているのだ。
実は、今週上京し、S学館の担当、そしてS学館の抗争相手であるK談社の担当に会ってきた。
珍しく1泊の予定だったのでK談社にホテルの予約を頼んだところ、何も言っていないのに池袋のホテルを用意してくるところが行き届いている。
ここで私がオタクであることは知っていても、オタクの解像度が粗いせいで秋葉原とかを持ってくる奴は二流である。
ただ、その気の回し方が逆にムカついたため「打ち合わせの前にジュソク堂書店と乙女ロードどっちに寄りますか?」という問いに対してジュソク堂を選ぶという自傷行為を敢行した。
書店というのは基本的に売れている本が置かれ、私の本が置かれていないという、刑場でしかないので極力近寄らないようにしているのだが、担当の気遣いを無下にするためなら心のリストカットも厭わない。
その後、私のK談社単行本は見事1冊しか置いておらず、申し訳なさそうに「S学館の単行本なら何冊か…」という書店員の言葉をK談社担当はあまりにも自然に2回無視、最終的に壁一面に貼られたアニメ化作品のポスターを前にハガキ大のPOPを描かせてもらう営業に成功したのでやはり書店を選んで良かった。
(つづく)
次回更新予定日 2024-8-28