ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第45回
世間に歓迎されない職業を目指す子供の
親御さんに伝えておきたいことがある
私は漫画家を目指すことを親に止められた口である。
何故もっと本気で止めてくれなかったのか。おそらく「暴力」や「投薬」を使わなかったのが敗因だろう。
しかし、今お子さんがユーチューバーやゲーム実況者など、あまり世間にウケが良くない職業を目指しているという親御さんに伝えておきたいことがある。
それ以前にこれらは「職業名」がはっきりしているだけまだマシであり、それより「起業したい」や「人の役に立つ仕事がしたい」「グローバルな世界で活躍したい」とか言っている方がヤバい。
逆に一見立派なことを言っているため、親が油断してしまう分、性質が悪い。
これらは要約すると「なりたいものはないが、とにかく会社にだけは死んでも入りたくない」という、非常に無職力(ムショクリキ)の高い発言である。
むしろ「絶対に働きたくないでござる」と言っている方が「潔さ」という点でまだ見込みがある。
ともかく、あんまり世間に歓迎されない職業を目指す子どもの夢を、何らかの方法、何らかの粉末で諦めさせたからと言って、次は国家公務員を目指してくれるというわけではない。
「だったら次はガンダムになる、乗る方じゃなくて本体」とさらに夢がでかくなるならまだ良い方で、最悪それ以降「何も目指さなくなる」可能性がある。
よって子どもの進路を軌道修正したかったら、ユーチューバーになりたいという夢を忘れるまで監禁した後、公務員を目指す脳の手術を施すまでしなければいけないということになるが、おそらく合法の範囲でそれは無理である。
よって子どもが何を目指そうが「海賊王」など、犯罪行為を含まない職であれば、いきなり放水機で火を消すような真似はしない方が良い。
だがそもそも「安心な職業」というのがこの世にあるだろうか。
特に今はコロナウィルスの影響で、景気の良かった会社が一瞬で倒産したりと、どんな大企業に入ろうが潰れない保証はないし、トヨタとかですら終身雇用のことを「良い奴だったんですが、惜しい人をなくしました」と言っているような状況である。
例え公務員でも、物理的な意味ではなく日本沈没する可能性はゼロではないし、不慮の事故や病(ビョウ)で働けなくなるということは十分あり得る。
つまり、絶対に安心な職業などなく、不慮の事態が起こりやすいか、にくいかの差でしかない。
漫画家はそれが起こりやすく、むしろ不慮じゃない時の方がレア、というだけである。