ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第45回

ユーチューバーやゲーム実況者など
世間に歓迎されない職業を目指す子供の
親御さんに伝えておきたいことがある

ちなみにこの「仕事を兼業することにより収入源自体を増やす」というのは「自助」をしてほしい政府的にも歓迎らしく、企業に「副業」を認めるよう働きかけているようだが、まず副業までしないとサバイブできない世の中を何とかしてほしい。

漫画家なんかになった奴はしょうがないが、会社でフルタイムで働いている人間が副業しないと生きていけないというのはハードモードすぎる。

もし、漫画家1本という、バンジージャンプみたいな生き方をする場合でも、リスク分散ができないわけではない。
漫画の連載1本だけだと、まさにギャンブルであり、当たれば億万長者、はずして打ち切りになればただの無職、というオールオアナッシングである。

しかし、30ページの月刊連載を1本にするのではなく、10ページの連載を3本という形で分散すれば、即死リスクは減る。

一球入魂できずどれも中途半端になるというデメリットもあるが、1本に賭けるとそれがダメだった時、漫画家として心が折れて次が描けないという危険性もあるため、精神的な意味でもリスクを分散できる効果がある。

他にも単発の仕事を受けたり、仕事が来なくても自分で電子書籍を作ったり、グッズやスタンプ、臓器を販売したりと、漫画家という職業の中でも手広くやって、安定性を高めるということはできる。

私が全く売れてないのに何故作家を続けられているか、それ以前何故餓死していないか、というと、少額でも連載数を増やし、単発の仕事も来れば受けるなど、とにかく球数を増やしてきたからだと思う。

だがこの方法には「死ぬほど疲れる」というデメリットがある。
体力的にも疲れるが「締め切り」という1個でも嫌なものがほぼ毎日ある、というのは精神的にも良いわけがない。

もちろん「リスク分散」という考え方は自体は正しい。

しかし「手堅い物件を複数持つ」というのが理想的なリスク分散である。
MT5(マジで倒産5秒前)な会社の株ばかり何十社も持っていても無意味だ。
危険をいくつ集めても危険であり、どれだけ増やしても疲れるだけで、安心できるということはないのである。

漫画家という職業は基本的に危険であり、仕事を増やしても「危険の中で危険を分散している」ということだけは覚えておいて欲しい。

(つづく)

 
カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。

◎編集者コラム◎ 『若殿八方破れ(二) 木曽の神隠し』鈴木英治
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