ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第48回
「催促し飽きない」
ことで成り立っている
何故毎回催促が入るまで書かないのかというと「催促が来てから書けば間に合う」というのもあるが、純粋に忘れている場合も多い。
つまり「忙しい」のではないか、ということだ。
仕事が忙しいことには何の不満もない。社会では一度たりとも必要とされたことがない自分に、原稿の依頼があり、それを読んで喜んでくれる読者の幻覚が見える、という今の状況にはむしろ感謝しかない。
…という内容の手記を毎日釘で壁や胸に刻むことで自我を保っている状態だが、実際今の仕事を1人でやるのは限界なのではないかと感じることも増えた。
貴様の漫画のどこに他人の手の入る余地があるのだ、と思われるかもしれないが、そういう人は今一度私の漫画を買って見て欲しい、もしくは買うだけでもいい。
私の漫画には、余地という名の余白しかないので、他人が「ちくわ じゃがいも ニンジン カレールー」などと書きこめる余地は十分にあるのだ。
それに原稿を手伝ってもらわなくたって、担当のメールに対し「すみません、原稿は出来ていたのですが、送るのを失念しておりました」や「見落としてました」「迷惑メールに入ってました」という3種類ぐらいのテンプレで返信してくれる人間がいるだけでも大分捗る。
実際、細かい仕事を多く受けすぎて、メールの返事をするだけでもかなり時間がかかるし「原稿送ります!」と勢いよく送ったメールに原稿データを添付し忘れ「添付がありません!」「すみません!再送します!(添付を忘れる)」という、令和と思えないやり取りを数往復してしまうことがままあるのだ。
あとスケジュール管理をしてくれる人間がいれば、忘れるということ自体なくなりそうだが、スケジュールを理解していることと、スケジュール通りやることに関係性はないので、それは別に良い。
つまり、アシスタントを雇った方が良いのではないのか、ということだ。
私が住んでいる僻地で「漫画のアシスタント」などという仕事をしている人間はほぼいないだろうし、社会的信用も、まだ「前科三班です」と名乗った方がまだ温かい目で見られるぐらいなのだが、幸い、と言ったら語弊があるが、コロナウィルスの影響で、漫画業界もさいとうたかおプロがリモート化するぐらい、在宅勤務化が進んだ。