ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第59回
同業者とはあまり
かかわらないようにしているが…。
だがそうではなく、嫉妬で生まれたパワー全てを、相手の足をひっぱり、自分の下に引きずり下ろすこと使ってしまうタイプもいるのである。
私は無論このタイプであり、むしろ「地球のみんなオラに嫉妬を分けてくれ!」と、嫉妬玉を作って相手にぶつけようとさえする。
こんな特に理由のない嫉妬をぶつけられる方は迷惑でしかないだろうが、ぶつける方も決して楽しいわけではない。
つまり誰も得してないので、不必要な嫉妬を起こさないために、同業者とは最初からあまり関わらないようにしている。
だが、デビューしたてのころはそういうことがあまりわかっていなかったため、作家との交流会に参加していた時期が少しだけある。
その時いた人たちが軒並み売れてしまったため、その交流は未だに「漫画家生活最大の過ち」となっている
だが先日、その時知り合った作家が、ツイッターに新規実装されたボイスチャット機能「space」を開いていたので冗談ではなく数年ぶりに同業者と話をした。
それは良いのだが、「space」というのは基本的に誰でも聞け、ホストの承認があれば誰でもスピーカーとして喋ることができるため、気づいたら周りが売れている漫画家だらけになっていた。
漫画家生活最大の過ちが更新されてしまったかもしれない。
人間とは過ちを繰り返す生き物であり、何度でも便座が上がっていることに気づかず便ツボにはまる。
しかし、これだけ「売れている漫画家が嫌いだ、読まない」と公言しているのに、本人が現れた途端「これはこれは!すごい方と同席しちゃいましたぞー!」みたいになるのはダサすぎる。
よって、その場にいた初対面の売れている方々にちゃんと「嫌いだし読んでねえ」と言えたのは良かった。
むしろ、これが漫画家生活最大の頑張りでありピークと言っても過言ではない。読者の皆様に今後ピークを披露することが出来なくて残念だが、悔いはない。
だが、問題はこのやりとりが不特定多数のリスナーの前で行われていたということである。多分聞いていたのは私の読者ではなく、売れている方々の読者だ。
その人たちは、売れている作家に知らない人が噛みついている構図をどう思ったのだろうか。考えるだけでカッターを握る手に力が入る。