ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第74回
1年が経つのが早い。
「とりかえしがつかない」を
膝で理解した昨今である。
もう12月である。
漫画家になってから1年が経つのが本当に早い。
12回ほど「今月の締め切りが終わって今月の締め切りが始まる」というコブラ×まどマギコラボを開催すればいつの間にか終わっている。
ただやっていることは無限ループなのに年だけはバッチリとっており、来年もう40歳である。
「とりかえしがつかない」の意味を言葉ではなく、かといって魂でもなく、膝で理解した。
しかし、逆に年を取らずに締め切りを繰り返している方が怖いし「‥シテ‥コロテン‥」である。今年も着実に死という名の救済に一歩近づいて喜ばしい限りだ。
しかし、今年は初めて漫画の賞をもらったり、大袈裟ではなく漫画の重版がかかったりと決して悪い年ではなかった。
あとはそれが植物状態の私が病院で見ている夢でなければ最高の年と言って良い。
しかし、漫画家は膝のとりかえしは早急につかなくさせるが、職業としては割ととりかえしつく期間が長い職業である。
実際、30超えてからデビューしたという人も少なくないし、40、50で初めてヒットを出したという人もいる。
逆に言えば死ぬまでワンチャンあるため、足の洗い時を逃し、洗おうとした時には完全に膝が粉砕されており、洗ってどうにかなる問題ではなくなっていたりする。
ちなみに、会社員から漫画家になった場合、社会経験があるので漫画家がダメだった場合でも社会に戻りやすいと思うかもしれないが逆である。
実際、会社員経験がある作家ほど口を揃えて「二度と社会には戻れない」と罪人の顔で言っている。
スラム街に住んでいる人も生まれながらにスラムに住んでいる人もいれば、シャバで犯罪や反社会的な人のナオンを抱いてしまったためそこにいられなくなりスラムに逃れてきた人もいる。
会社員から漫画家になった人間の中にも、社会にいられなくなったからここに来た、という後天的スラム街の住人が一定数いるのだ。
そういう人間はもう自分に社会でやっていく能力がないと重々わかっているし、出ても居場所がないし、最悪どのツラ下げて戻ってきたとボコられる可能性がある。