【光の剣、贄殿遮那、デルフリンガーなど】ライトノベルの人気美少女たちが使う最強の武器5選!

神話や伝説で数多く語り継がれてきた、神々や英雄、そして美しい姫君や恐ろしい怪物。そういった存在に劣らず、伝説の武器――聖剣や魔剣、槍や弓もまた、魅力にあふれ、多くの人々を惹きつけています。では、人気のライトノベル(=ラノベ)には、どのような武器が登場するのでしょうか。武器の持つ力や、作品の魅力について紹介します。

※本稿には、本文中に登場するライトノベル作品のネタバレが含まれています

 古今東西の神話や伝説では、数多くの神々や英雄、美しい姫君や恐ろしい怪物のことが語り継がれています。ですが、そういった存在に劣らないほどに、伝説の武器――聖剣や魔剣、槍や弓の存在もまた、人の心を惹きつけてきました。アーサー王の聖剣エクスカリバーや、三種の神器の一つである草薙剣くさなぎのつるぎなどは有名です。
 では、ライトノベルには、どのような武器が登場するのでしょうか? ライトノベル(=ラノベ)といえば多くの美しい美少女の戦士や勇者が登場し、恋する男の子を守るために、あるいは怪物と、あるいは恋敵の美少女と戦います。もちろん、ヤマグチノボル作『ゼロの使い魔』 の平賀才人ひらがさいとのように、惚れた女の子のために身体を張って戦う勇敢な少年たちもいます。ラノベは、若者向け小説として出発し、独自の文化を築いてきた“オタク”界の花形コンテンツのひとつですが、そこでも、多くの魅力的な武器のことが語られています。

ラノベの歴史を切り開いた一振り。使用者の意志を刃に変える――光の剣

神坂一かんざかはじめ『スレイヤーズ!』富士見ファンタジア文庫 1990年

スレイヤーズ
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 ラノベの歴史をたどれば、その起源は諸説あります。水野良の『ロードス島戦記』、あるいは栗本薫や高千穂遥たかちほはるかをその原型とする人もいるでしょう。けれど、アニメイラストと漫画的な文体で構成された“萌え系”小説としての「ラノベ」の元祖としては、 神坂一作の『スレイヤーズ!』を挙げることに賛同する人も少なくないのではないでしょうか。元気一杯な天才魔道士の少女リナと能天気な性格の青年剣士ガウリイ=ガブリエフが冒険の旅を続ける、古き良きファンタジー物語です。

 長い金髪の凛々しい美青年ながら、難しいことを考えるのが苦手でリナから「くらげ頭」などと罵倒されるガウリイは、作中並ぶもののない無敗の剣士。その彼が振るうのが、物質的な破壊力と相手の精神そのものを断ち切る「光の剣」。『スターウォーズ』のライトセーバーや『機動戦士ガンダム』のビームサーベルのような、光線を刃にする剣で、作中では伝説の魔獣ザナッファーを倒した武器として知られ、ガウリイの家に家宝として伝わっていました。

 この剣は、その威力もさることながら、物理攻撃の効かない霊体である「魔族」にダメージを与えられる魔法の剣。これにより、魔法の力がなくては手も足も出ない魔族を、人間が倒すことができるのです。作中でも、ガウリイはその達人級の剣技で光の剣を振るって、多くの魔族を倒しました。『スレイヤーズ!』の世界の魔族は下級の存在でも人間を玩具のように扱う強大な悪魔で、光の剣は人間の魔族に対する数少ない対抗手段。文字通りの「伝説の武器」なのです。

 しかし、この剣は物語の途中、高位魔族の一人・冥王フィブリゾとの戦いの中でガウリイの手から失われてしまいます。魔族すら切り裂く光の剣の正体は、異世界の魔族・ゴルンノヴァが剣の姿に化けたもので、フィブリゾとも同格の超越的存在でした。そんな存在の化けた剣だからこそ、魔族を斬ることができたのでしょう。光の剣はフィブリゾの手によって異世界に送り返され、フィブリゾを打倒した後でもガウリイの手に戻ることはありませんでした。その後リナとガウリイは、光の剣にかわる魔族を倒す力を持った剣を求めて旅を続けることになります。

燃える瞳の少女の名前となった、一振りの大太刀――贄殿遮那

高橋弥七郎『灼眼のシャナ』電撃文庫 2002年

灼眼のシャナ
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 美少女がラノベの主役となる、現在の流れの中で、『灼眼のシャナ』は、避けて通れない名作です。「紅世ぐぜともがら」と呼ばれる異世界からの侵略者、心ある「紅世の徒」と契約して邪悪な「紅世の徒」を狩る戦士「フレイムヘイズ」など、作中独自の用語が数多く使われているのも、2002年の中期以降のラノベの大きな特徴です。この物語では、平凡な高校生・坂井悠二が、燃えるような赤い髪と赤い瞳をした勝気な美少女戦士・シャナと出会い、人を食う「紅世の徒」との戦いに巻き込まれていきます。

 深緑色のセーラー服に長い赤髪の、小学生のように小柄なシャナは、自分の身長ほどもある長い日本刀「贄殿遮那にえとののしゃな」を軽々と振るって、炎を操って怪物たちと戦います。そして、戦いのためだけに育てられた彼女は、登場した当初は名前を持っていませんでした。作品のタイトルにもなっている「シャナ」とは、悠二が、彼女の愛刀をもとに呼び名として付けた名前なのです。

 この刀自体には、特別な能力は何もありません。ただ非常に丈夫で、どんな強大な「紅世の徒」でも倒す切れ味があるだけです。にもかかわらず、この刀は、シャナという少女の象徴として、作中でも大きな意味を持っています。
 その昔、年老いた刀匠がいました。彼は「紅世の徒」の神のような力に魅了され、自分の魂を込めて刀を打ちました。絶対に折れないその刀は、強い者が使ってこそ真価を発揮する武器でした。刀匠は刀を強者に託すため、「天目一個てんもくいっこ」と呼ばれる甲冑に憑依し、体内に刀を宿して、強者を求めてさまよい続けました。

 そして天目一個は、フレイムヘイズ候補として育てられた少女と出会います。彼女は最強の「紅世の徒」である魔神アラストールとの契約をするため修行を続けていましたが、ある日「紅世の徒」の襲撃を受け、突如実戦に放り込まれることになります。しかし少女は、非常事態にも動じることなく、喜んで戦いの運命を受け入れました。その意志の強さこそが、天目一個の求めた真の強者の条件でした。少女はアラストールと契約し、恐るべき強さの天目一個と戦い、見事その刀を奪い取ります。これが、のちに運命の人から「シャナ」と名付けられる美少女戦士の誕生の瞬間でした。『灼眼のシャナ』という物語は、魂の宿る名刀「贄殿遮那」とともに始まったのです。

異世界に召喚された少年のよき相棒、意志を持つ魔剣――デルフリンガー

ヤマグチノボル『ゼロの使い魔』MF文庫J 2004年

ゼロの使い魔
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『灼眼のシャナ』とともにラノベ中興期を支えた有名作として、『ゼロの使い魔』も外せません。本作のヒロインである魔法学院の女子生徒ルイズは、シャナと同様、声優・釘宮理恵氏が演じた役として有名で、2人とも「ツンデレヒロイン」の代名詞です。ツンデレとは、定義は多様ですが、おもに「最初は特定の男の子にツンツンと尖った態度を取るが、やがてデレデレと惚れるようになっていくヒロイン」、あるいは「普段はツンツンしているが、二人きりになるとデレデレする」といった意味があります。

 現代日本の元気一杯の高校生だった平賀才人は、ある日、不思議に光る鏡によって中世風ファンタジーの異世界に転移し、そこで自らを呼び出したルイズの使い魔となってしまいます。ルイズは王国の名門貴族の令嬢ですが、なぜか魔法は失敗ばかりで「ゼロのルイズ」と呼ばれて馬鹿にされています。魔法学院でたった一度きりの使い魔召喚の儀式においても、本来なら竜やカエルやネズミといった動物や魔物を呼び出すはずが、なぜか異世界の男の子を呼び出す始末。どちらにとっても想定外の事態にルイズも才人も戸惑い、喧嘩ばかり。そんな中でも、若い2人は、次第に絆を深めていきます。

 そんな才人が、ある時、武器屋でルイズに買ってもらったのが、一振りの古ぼけた大剣。言葉をしゃべり、自らを「デルフリンガー」と名乗る、不思議な剣でした。何かあると「おでれーた!」と叫ぶのが口癖の気さくなデルフリンガーは、たったひとり日本から連れ去られた才人のよき話し相手となります。そして、最初はただのボロボロの剣でしたが、盗賊や反乱軍との戦いの中で、「敵の魔法を吸収する」という特殊能力を発揮し、「メイジ」という魔法使いが絶大な権威を持つ異世界において、才人の強い味方となっていきます。

 武器屋のオヤジと喧嘩しながら初登場し、二束三文で買われたデルフリンガーですが、非常に謎の多い存在でもあり、当人いわく6000年もの間生きていたといい、地水火風に続く幻の元素「虚無」や、ルイズの世界に魔法をもたらした「始祖ブリミル」とも関わりがあるようです。長い年月を生きたおかげで、肝心なことをほとんど忘れてしまっていますが、物語が進むにつれてデルフリンガーの失われた記憶は取り戻されていきます。その全ての記憶が甦った時が、彼を、そして才人とルイズを取り巻く6000年越しの壮絶な運命が明らかになる時でもあるのです。

奪われた少女の心のカケラを求めて、少年は世界に立ち向かう――大罪武装

川上稔『境界線上のホライゾン』電撃文庫 2008年

ホライゾン_
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 これまで紹介した3作品は、ラノベの歴史において王道、ファンなら誰もが目にするような作品でした。対して、この『境界線上のホライゾン』(通称『境ホラ』)は、非常にマニアックで、ユニークなラノベです。まず目をひくのが単行本の分厚さ。各巻がおおむね700~900P、最長のXI<下>に至っては1160P! 一般的なラノベが200~400P程度なのを考えると、辞典のような分厚さ。しかも、それが全29巻もあるのです。
 その世界観やストーリーの複雑さ、登場人物の多さも、とても簡単に紹介しきれないほどですが、それでもあえてここで取り上げたのは、その圧倒的な完成度の高さ、作品としての密度の濃さによります。日本の戦国時代と近世ヨーロッパをモデルにしたSF+ファンタジーの世界観で、政治、経済、戦略、そして恋愛など、「人間」にまつわる多様なドラマが展開されていくさまは、圧巻の一言です。ラノベというコンテンツが、どこまで知的な掘り下げを行えるかという試みにおいて、『境ホラ』は一つの指標と言えるかと思います。

 遠い未来、汚染された地球で暮らす人類は、天へ上るため「歴史再現」を行います。しかし、ある時「末世」と呼ばれる世界の終わりが訪れてしまいます。これを防ぐために、松平・元信という科学者が、娘である「ホライゾン・アリアダスト」の感情を取り出して9つの「大罪武装たいざいぶそう」に作り替え、世界各国に配ります。「武蔵」の国の王である主人公、葵・トーリは、ホライゾンの心を取り戻すため、仲間たちと共に全世界の国々に戦いを挑みます。

 大罪武装は剣、盾、弓など様々な武器の形をとり、いずれも作中屈指の強大な魔力を持つ魔法の武器です。トーリたちが最初に奪還する剣砲「悲嘆の怠惰」は空中戦艦を撃墜する砲撃を放ち、聖連の代表である教皇インノケンティウスが操る鉄槌「淫蕩いんとう御身おんみ」は戦場にいる敵から、戦う力を全て奪って無力化してしまいます。
 これらはホライゾンの感情を奪って作った武器であるため、彼女は各国によって処刑されそうになっても嘆くことすらできません。そこへ敵陣を越えてトーリが訪れ、取り戻した「悲嘆の怠惰」を渡します。襲い来る追手の戦艦を撃沈するため「悲嘆の怠惰」の真の力を発動させたホライゾンは、悲しみの感情を取り戻したことで生まれたての赤ん坊のような泣き声を上げます。それが、『境ホラ』という壮大な物語の最初のクライマックスであり、開幕の合図なのです。
 聖連の軍隊からホライゾンと最初の大罪武装を取り戻したトーリたちは、その後世界各国を回って時に戦い、時に交渉を重ねて、ホライゾンのすべての感情を集める旅に出ます。そのさなか、世界の終わりを解決する方法も探っていくことになります。その鍵となり、物語の核心となるのが、大罪武装という武器なのです。

人々の思いから生まれた、幻想の具現化――約束された勝利の剣

奈須きのこ『Fate/stay night』TYPE-MOON 2004年

Fate
https://www.amazon.co.jp/TYPE-MOON-Fate-Stay-night/dp/B0000UMS32

『Fate/stay night』、通称『Fate』は厳密にはラノベ(紙および電子の書籍)ではなく、ビジュアルノベル(ノベルゲーム)です。けれど、ビジュアルノベルはラノベ同様アニメ画を添付した小説で、ゲームとはいっても『スーパーマリオ』や『ドラゴンクエスト』のような、キャラクターを操作して遊ぶゲームではありません。また、奈須きのこの処女作『空の境界』や『Fate』の番外編である虚淵玄うろぶちげん著『Fate/Zero』などは小説として出版されています。したがって、本作に登場する武器もあえて「ラノベの武器」の一例として引用することにします。何よりも、「約束された勝利の剣」の存在は、人気ラノベ作品に登場する武器としては、無視することができないほどに、有名な存在でもあります。

『Fate』は、魔術師たちがかつて実在した、あるいは神話に登場した英雄の霊(英霊)を召喚し、あらゆる願いをかなえるという宝物「聖杯」を奪い合う物語です。普通の高校生だった主人公・衛宮士郎えみやしろうはその戦いに巻き込まれ、金髪の少女「セイバー」と契約します。このセイバーこそ、伝説では男性として伝わっているものの実は男装した少女だったアーサー王であり、約束された勝利の剣・エクスカリバーの使い手です。

人々の夢や理想が星の力で形となった聖剣で、魔力を光に変えて放ち、その破壊力はビルほどもある怪物を一撃で吹き飛ばすほど。アーサー王がイギリスの神話であるアーサー王伝説に登場する人物であるように、エクスカリバーも神話をもとにした武器で、その知名度は伝説の武器でもトップクラスでしょう。ラノベファンの間でおなじみの『Fate』のエクスカリバーも持ち主とともに知名度は抜群です。『Fate』は漫画やアニメなど数々のメディアに展開して巨大コンテンツとなり、これをもとに作られたディライトワークス株式会社によって運営されているスマホ専用RPG『Fate/Grand Order』は、2018年上半期、モバイルゲームの売上1位に輝きました。「約束された勝利の剣エクスカリバー」は、『Fate』というコンテンツの勝利をも約束し、切り開いた剣だと言えるかもしれません。

ラノベというメディアでの伝説の武器の立ち位置とは?

 このように見てくると、ラノベにおける特別な武器は、作者が考えたオリジナルの武器が多い傾向にあります。エクスカリバーや草薙剣といった実在の伝説にある武器の名前は、『ファイナルファンタジー』や『ファイアーエムブレム』のようなゲームで、より多く見ることができます。
 さらに、ラノベ全体、ことに近年の「小説家になろう」出身の作家によるラノベなどでは、名のある武器自体、比較的少ない傾向があります。暁なつめ作『この素晴らしい世界に祝福を!』、伏瀬による『転生したらスライムだった件』といった最近の話題作にも、あまり聖剣は登場せず、魔法や必殺技の方がメインとなります。ゲームでは、プレイして敵キャラを倒す手段としての武器が必須となるのに対して、小説であるラノベではキャラ同士の会話や出来事などが中心となり、漫画やアニメほど伝説の武器のデザインをクローズアップしなくてもよいことが関係しているのかもしれません。
 とはいえ、ライトノベルやゲームの業界ではメディアミックスも盛ん。ゲームのノベライズ、あるいはその反対のラノベのゲーム化やソシャゲー(主にSNS上で提供されるオンラインゲーム)とのコラボも行われます。多様な媒体を通してキャラや武器に親しめるのも、魅力のひとつでしょう。

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