宮下 奈都のオススメ作品を紹介
読むと「温かい気持ちになる」「優しい気持ちになる」と読者に人気の宮下奈都。本屋大賞を受賞した『羊と鋼の森』を含む、宮下奈都のオススメの作品をご紹介します。
3人目のお子さんがお腹にいる30代半ばの時に小説を書き始めたという宮下奈都。2013年には家族で1年間、北海道の自然の中で暮らす山村留学を経験したそうです。北海道の圧倒的な自然を前にして、感じたことが「羊と鋼の森」の執筆のきっかけになっとも語られています。
羊と鋼の森
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4163902945
2016年の本屋大賞で大賞を受賞した作品。本を売るプロである書店員さんが選ぶ本屋大賞は、近年かなり注目を集めている賞で、一人の青年が、ピアノの調律師として成長していく物語です。高校生の時に学校にやってきた調律師がピアノの調律をしているところを目にし、調律に魅せられた主人公。その後は専門学校を卒業し、楽器店で働きながら調律師を目指します。「自分はこの仕事に向いているのだろうか。」、「今の仕事でどこを目指せばいいのだろうか。」、仕事をしていれば誰でも持ったことのあるそんな思いを主人公も抱えるようになります。お客さんや先輩調律師との交流を通じて、調律師としての技術を磨き人間的にも成長していく主人公。小説を読んでいるのにまるでピアノの音が聞こえてくるようだという感想も多く、その表現力の素晴らしさが際立っています。
ゆるされている。世界と調和している。それがどんなに素晴らしいことか。言葉で伝えきれないなら、音で表せるようになればいい。ピアノの調律に魅せられた一人の青年。彼が調律師として、人として成長する姿を温かく静謐な筆致で綴った、祝福に満ちた長編小説。
誰かが足りない
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4575517178
2012年の本屋大賞では7位に選ばれた作品。物語の舞台は、予約を取るのが大変なレストラン「ハライ」。同じ日の同じ時間にレストランを予約した客たちそれぞれの物語です。就職が決まっていた会社が倒産してしまった青年、認知症の初期症状が出ている老女、人とコミュニケーションをとるのが苦手な青年。それぞれがいろいろな事情を抱え、悩み、レストランにやってきます。辛くてもそれでも前へ進んで行く、絶望の先に希望を見出してくれるような作品です。
おいしいと評判のレストラン「ハライ」に、同じ時に訪れた6組の客の物語。仕事に納得がいっていない。認知症の症状がではじめた。ビデオを撮っていないと部屋の外に出られない。人の失敗の匂いをかぎとってしまう―「足りない」を抱える事情はさまざまだが、前を向いて一歩踏み出そうとする時、おいしい料理とともに始めたい。決心までの心の裡を丁寧に掬いあげ、本屋大賞にノミネートされた感動作。
太陽のパスタ、豆のスープ
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4087450260
結婚式の直前、突然婚約破棄されてしまった主人公。落ち込む主人公に、叔母はやりたいことや楽しそうなことのリストを作成することをすすめます。そして主人公はしぶしぶながらもリストを作成し、実行していくことに。やりたいことや好きなことを考えながら、自分の本当に望むことは何なのか深く考えることになります。失恋をきっかけに、今まで気づかなかったことにたくさん気づいていく主人公。失敗や挫折は人を成長させてくれると絶好のチャンスなんだと思い出させてくれる作品です。
人生は自分の気持ち一つで変わるんだ!結婚式直前に婚約を解消された明日羽(あすわ)。傷心の彼女に叔母のロッカさんが提案したのは“やりたいことリスト”の作成だった。自分の気持ちに正直に生きたいと願う全ての女性に贈る感動の物語。
はじめからその話をすればよかった
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4408552933
小説を書くようになった経緯、小説の着想について、旦那さんとの出会い、家族について、好きな音楽や本について。宮下奈都の日常の出来事や思いが綴られているエッセイ集。書評や自分の作品について解説されているものもあります。短いエッセイが81編なので、一つ一つのエピソードは数ページと短くとても読みやすくなっています。テーマもほのぼのするようなものばかりです。肩の力を抜いて、のんびり読書したい時にぴったりの作品です。
大好きな本や音楽、そして愛おしい三人の子どもたちと共にある暮らしを紡いだ身辺雑記。やさしくも鋭い眼差しで読み解く書評。創作の背景を披瀝した自著解説。瑞々しい掌編小説―。
たった、それだけ
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4575238805
6つの短編で構成される連作短編集となっているのでとても読みやすい作品。収賄という犯罪行為に関わっていた海外営業部長の望月、そして犯罪をリークした望月の愛人。望月は失踪し、残された妻や娘は……。重いテーマで途中までは苦しい場面もありますが、細かい心理描写や印象的なセリフがたくさん登場し、最後は宮下奈都らしい、希望を持てる結末となっています。
贈賄の罪が明るみに出る前に失踪した男と、その妻、姉、娘、浮気相手。考え抜いたそれぞれの胸の内からこぼれでた“たった、それだけ”のこと。本屋大賞ノミネート作『誰かが足りない』の感動ふたたび。人の弱さを見つめ、強さを信じる、著者の新たなる傑作!
まとめ
宮下奈都の作品は、「読んだ後優しい気持ちになりました。」という感想がよく聞かれます。登場人物が優しい人が多いというのもありますが、全体を通して温かい雰囲気が漂う作品が多い宮下奈都。読むだけで優しい、幸せな気分にしてくれる小説というのはありがたいものです。元気のない時やほっとしたい時にぜひ読んでみてください。
初出:P+D MAGAZINE(2016/08/29)