スピリチュアル探偵 第10回

スピリチュアル探偵 第10回
今度は、なんと二人組!!
探偵史上、忘れられない体験とは?

 映画やドラマには、"バディもの"と呼ばれるジャンルがあります。主には男性コンビが活躍するエンターテインメントで、「相棒」シリーズなどはその最たるものでしょう。広い意味では、シャーロック・ホームズとワトソンのコンビもこれに相当するかもしれません。

 実はスピリチュアルの世界にも、名バディが存在します。いえ、正確にいうと存在していました。

 残念ながら現在は廃業してしまったようですが、これは僕の長いスピリチュアル探偵史の中でも、忘れられない事例の1つ。今なお思うことの多い体験なのですが、この場を借りて振り返ってみることにしましょう。

〈CASE.10〉知られざる実力派!? 謎めいた初老コンビ

 僕がまだ20代の頃の話です。僕は当時、雑誌や書籍の仕事をこなす傍ら、千代田区内にオフィスを構える小さな広告制作会社とお付き合いしていました。出版の世界とはまた少し違ったカルチャーに触れられる上、ギャラがいいので非常に重宝していたクライアントさんです。

 ある日、その会社のTさんという女性ディレクターと雑談していたら、こんな話題が飛び出したのです。

「ちょっと前に、サラリーマンの男性が奥さんにめった刺しにされて殺された事件があったの、覚えてる?」
「ああ、もちろんです。けっこう大きなニュースになってましたよね」

 これは当時、それなりに世間を騒がせた大事件でした。会社から帰ってきた夫を妻が包丁で刺殺したもので、夫が仕事に忙殺されるあまり家庭不和に陥り、心を病んだ妻が凶行に及んだ──というのが大まかなあらまし。

「あの被害者の男性、うちの会社のYさんの知り合いだったのよ」
「え! それは……、なんと言っていいかわかりませんが、大変でしたね」
「お葬式にも参列したみたいで」
「あんな事件が身近で起きたら、Yさんのメンタルも心配になりますよ」

 僕自身はそのYさんとほとんど交流はありませんでしたが、ニュースで見ていた殺人事件が身近なところで繋がると、なんだか胸中穏やかではいられません。すると、話は思わぬ方向へ。

「うちの会社のメンバーが何人もお世話になってる、凄腕の占い師がいてね」
「はあ」
「私も見てもらったことがあるんだけど、その先生がとにかく当たるの。仕事や家庭の状況とか、言わなくても全部見えてるような人で」
「占い師というより霊能者っぽいですね」
「そうそう、まさにそんな感じ。実はYさんも何度かその先生に見てもらっていて……」

 話を要約すると、Yさんが数カ月前にその占い師の元を訪れた時のこと。Yさんは主に、自分の仕事のことを相談したようですが、最後にふと思い立って、「先生、今度友人を連れてきてもいいですか? 家庭のことで随分悩んでいるので……」と告げたそう。すると、その占い師はこう言ったのです。

「構いませんよ。……ただ、急いでくださいね。早くしないと来られなくなってしまいますので」

 ──もう、おわかりでしょう。Yさんが占い師の元に連れてこようとした友人こそが、その事件の被害者なのでした。

 


「スピリチュアル探偵」アーカイヴ

友清 哲(ともきよ・さとし)
1974年、神奈川県生まれ。フリーライター。近年はルポルタージュを中心に著述を展開中。主な著書に『この場所だけが知っている 消えた日本史の謎』(光文社知恵の森文庫)、『一度は行きたい戦争遺跡』(PHP文庫)、『物語で知る日本酒と酒蔵』『日本クラフトビール紀行』(ともにイースト新書Q)、『作家になる技術』(扶桑社文庫)ほか。

◇自著を語る◇ 柳 広司『太平洋食堂』
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