スピリチュアル探偵 第16回

スピリチュアル探偵 第14回
かつて獣医を夢見た探偵。
酔狂にも、ペット霊視を体験!?

小鈴は僕に何を望んでいるのか

 ここで、話題をうちの小鈴に戻します。

「僕、独り暮らしなので小鈴をどこまでケアできているか、たまに不安になるんですよね」

「それは、ごはんとかおトイレの世話とか?」

「そこはルーティンなので大丈夫だと思うんですけど、さっきも言ったように出張が多いので、かなり寂しい思いをさせてしまっているはずで……」

 ここで先生は、あらためて手元のiPadに目を落とし、いくつかの画像を凝視しました。

「出張や旅行に出掛けるときは、ごはんやお水の世話はどうしているんですか?」

「(小鈴に直接聞けよと思いつつ)2泊3日まではタイマー式の給餌器でどうにかしています。水も循環式の給水器をセットして出掛けますね」

「3泊以上のときは?」

「(同じく小鈴に聞けよと思いつつ)その場合は友人知人にあずかってもらうようにしてますが」

「なるほど……」

 先生は少し考え込むように、またiPadに視線を移しました。

「本当はね、たったの一晩だけでもお父さんが不在なのはイヤなんです、彼女は」

「え、ええ。そうでしょうね」

 小鈴がめちゃくちゃ寂しがり屋なのは、一緒に暮らしている僕が一番よく知っています。しかし、それよりもちょっと引っかかることが……。

「あとね、小鈴ちゃんはお父さんに早くお嫁さんをもらってほしいと思ってるみたいですよ」

「え、そうなんですか?」

「彼女は彼女で、お父さんを応援してくれているんです。今以上に幸せになってほしいな、って。ご結婚される気はないんですか?」

「ないことはないですが」

「ご夫婦で小鈴ちゃんの面倒をみられれば、よりケアも手厚くなりますし、何より寂しい時間が少なくなるのでいいですよね」

 そう言ってにっこりと微笑む先生。それはその通りなんでしょうけど……。僕はここで辛抱たまらず口を挟みます。

「あの。小鈴は僕のこと、〝お父さん〟って呼んでるんですか?」

「そうですね、お父さんです」

「おかしいなあ。僕のことはお兄ちゃんと呼ばせているんですが」

「え」

「いや、ほら。そのうち子供は子供で授かるかもしれないから、そのときややこしいじゃないですか」

「な、なるほど……」

 あかん、変な空気になってしまった。きっと妹萌えのイタいやつみたいに思われたことでしょう。

 結局この日は微妙なムードのままタイムアップ。最後に先生は「でも小鈴ちゃん、今とっても幸せみたいですよ。彼女はちゃんと満足しているから大丈夫」と、慰めるように言ってくれました。

 総括すると、物珍しくて飽きない40分間ではありました。しかし、その霊視能力が本物かというと、僕には判断材料がありません。というか終始、ニセモノでも言えることばかりだった感は否めませんが……真相を知るのは小鈴だけ。

 それよりも、帰ったらあらためて、「お父さんじゃなくてお兄ちゃんと呼びなさい!」と念を押さなければなりませんな。

(つづく)

 


「スピリチュアル探偵」アーカイヴ

友清 哲(ともきよ・さとし)
1974年、神奈川県生まれ。フリーライター。近年はルポルタージュを中心に著述を展開中。主な著書に『この場所だけが知っている 消えた日本史の謎』(光文社知恵の森文庫)、『一度は行きたい戦争遺跡』(PHP文庫)、『物語で知る日本酒と酒蔵』『日本クラフトビール紀行』(ともにイースト新書Q)、『作家になる技術』(扶桑社文庫)ほか。

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