福徳秀介さん(ジャルジャル)第3回 インタビュー連載「私の本」vol.11

福徳秀介さんとドラえもん

初小説を上梓した福徳さんに、今回はこれまでの読書歴について伺います。本を好きになる契機となったお笑い界の大先輩の青春小説や恋愛小説。いったい、どんな本に影響を受けてきたのでしょうか。


好きな小説の聖地巡りをした思い出

 僕が印象に残っている本は、中学生のときに読んだウッチャンナンチャンの内村さんの自伝的青春小説です。もうめっちゃ面白くて、衝撃的で。

 これを超えるものってあるのかなと探す感じで、ずっと本を読み続けていました。大学生のときはブックオフでよく100円の本を買っていたんですけれど、本があまりにたくさんあるから、だんだん悔しくなってきて、ここにある本を全部読んだろうと思って、「あ」の赤川次郎さんから始めたんです。でも赤川次郎さんの本自体が多すぎて、そこでもう挫折しました(笑)。

 あとは森見登美彦さんの恋愛小説『夜は短し歩けよ乙女』も好きで、何度も読み返しましたね。僕は兵庫県芦屋の出身だから京都は近かったので、物語に出てくる喫茶店とか街並みにもよく行って、いわゆる聖地巡りみたいなことをしてました。

「あー、この喫茶店のこの席に、主人公が座ったんやな」と思って、実際にその場で小説のシーンを読んだこともあったんです。

 僕の初小説も、かつての僕にとっての内村さんの小説のように、中高生たちが本を読むきっかけになってくれたらうれしいですね。物語の舞台は関西大学なので、そんなふうに聖地巡りをしてくれたらな、と思ったりもします。   

小説でファンタジーを描く難しさ

 一時期は恋愛小説をずっと読んでいましたが、万城目学さんの『鴨川ホルモー』と出逢って、違うジャンルの小説もありだなと初めて感じたんです。京都大学の怪しげなサークルに勧誘された主人公が、謎の「ホルモー」という競技を通じて経験する青春ファンタジーで、発想がめっちゃすごい。 

 僕は過去にショートストーリーは何本か書いたことがあって、そのときは荒唐無稽な内容でもいけたんです。でも今回、長編はやっぱり自分の人生をある程度、反映したものでないと書けないなということに気づいたんですね。

 たとえば関西大学も実際に通った大学ですし、登場人物がブルース・リーやスピッツ、犬が好きというところにも自分自身を投影しています。僕は高校のときに父親を交通事故で亡くしていて、その想いも登場人物に代弁してもらいました。

 そう考えると、長編小説のテーマになりそうなのはあと数個かな、という感じです。ありえへん世界とか、ファンタジーは、コントに任せようかなと思っています。

福徳秀介さん

もし原作が映画化されたら、そのときに思うこと

 小説では、誰かモデルをイメージして人物を描いたほうがいいよとアドバイスを受けたこともあって、「この役はこの人やな」「この人が話したらこんな感じかな」と具体的に思い浮かべながら書きました。

 もし、この小説が映画化されるときがきたら、その人に演じてもらえたらうれしいなとは思いますね。でも僕自身は、演技をそれほどやりたいとは思っていないんです。

 何度か演技をしたこともありますが、コントも映画も、自分が書いたものならいいけれど、他人が書いたセリフを言うのは難しい。そこにあまり責任もたれへんなと感じてしまうところがあって。

 だから、たとえ自分の小説が原作だとしても、たぶん出演はしないと思いますね。どんな作品になるかと、鑑賞する側に回ろうと思っています。

(次回へつづきます)
(取材・構成/鳥海美奈子 撮影/田中麻衣)

福徳秀介(ふくとく・しゅうすけ)
1983年生まれ、兵庫県出身。関西大学文学部卒。同じ高校のラグビー部だった後藤淳平と2003年にお笑いコンビ「ジャルジャル」を結成。TV・ラジオ・舞台・YouTube等で活躍。キングオブコント2020優勝、13代目キングに。福徳単独の活動として絵本『まくらのまーくん』は第14回タリーズピクチャーブックアワード大賞を受賞。絵本『なかよしっぱな』(2019)刊行。本作品が、小説デビュー作となる。


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