辻堂ゆめ「辻堂ホームズ子育て事件簿」第8回「夫婦は仕事のパートナー」
大量にある家庭のタスクを
夫婦でこなす秘訣は……。
──と、以上のような夫婦のあり方について夫が会社で同僚に話すと、まあ、うん、ドン引きされるそうだ。
妻の私がわりと異色な経歴の持ち主だからか、プライベートの生活がどんな感じなのか、夫の周りの人たちはそこそこ気になるらしいのだ。それに対して夫は、「家庭とは会社のようなもので、妻はプロジェクトを一緒に回していく重要なパートナーだから、そういう部分のやり方が最適化されているのは大変よいことだ」といった趣旨のことを答えるのだという。
そしてまったく共感されずに、引かれる。
……そりゃそうだ。
このエッセイを読んでくださっている方々も、「何やってんの、この夫婦」とお思いのことだろう。確かに私も、ここまで徹底して仕事のやり方を家庭に持ち込んでいるカップルは、自分の周りで見たことがない。やっぱり変だ。でも、私たちにとっては、これが一番楽だし、ストレスがない。
よく、やるべきことをスプレッドシート上で一覧表の形にしてみると、家庭でこなさなければならないタスクの量の多さに圧倒されることがある。そのすべてが夫婦の揉め事の種になりうることを思うと、家庭運営というのはやっぱり大変だ。自分を育ててくれた親にも、世の中のすべての先輩パパさんママさんにも、頭が下がる。
そうだ、このエッセイを書いていて思い出したのだけれど、私はよく考えたら高校生の頃から、塾や予備校に行かずに Excel で自身の受験勉強スケジュールを組み立て(年間/月間/日間)、Word の表機能で自分流の一問一答ノートを作成して暗記科目の勉強をしていた。人間、やはり根っこの部分はそう変わらないらしい。せいぜい、結婚相手が似たような思考の持ち主だったことに、深く感謝しようと思う。
この調子でいくと、我が家ではいずれ夫婦間だけでなく、子どもともクラウドサービス上でのファイル共有を始めるようになるのかもしれない。例えば家族旅行の計画表を全員で同時編集したり、夏休みの宿題の進捗チェックをスプレッドシートで管理したり……。いや、もしかしたら、今後はスプレッドシートよりもっと進んだサービスが生まれてくるのかも?
うーん、楽しみなような、怖いような。
(つづく)
\第42回吉川英治文学新人賞ノミネート/
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「辻堂ホームズ子育て事件簿」アーカイヴ
1992年神奈川県生まれ。東京大学卒。第13回「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞を受賞し『いなくなった私へ』でデビュー。2021年『十の輪をくぐる』が第42回吉川英治文学新人賞候補となる。他の著作に『コーイチは、高く飛んだ』『悪女の品格』『僕と彼女の左手』『卒業タイムリミット』『あの日の交換日記』『トリカゴ』など多数。