特別インタビュー 武田綾乃 「響け!ユーフォニアム」を語る
目標は、全国コンクールでの金賞! 吹奏楽に青春を掛ける高校生たちの成長を描いた青春小説「響け!ユーフォニアム」シリーズが完結しました。TVアニメ・劇場版アニメも大ヒット。累計159万部を突破したシリーズは、なぜ吹奏楽に馴染みのない読者をも虜にしたのでしょうか? 6年の歳月をかけてこの物語に向き合ってこられた著者の武田綾乃さんに、その想いを聞きました。(2019年7月5日・都内某所にて)
「ユーフォニアムはこんな楽器」と胸張って伝えたい
小説丸
『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、決意の最終楽章 後編』の刊行で、シリーズがついに完結しましたね。いま、どんなお気持ちですか?
武田
最終楽章の終盤はもう締切がギリギリだったので、ひたすらに慌ただしい感じだったのですが、最後のページを書き上げた直後は、やっぱり寂しさがこみ上げてきましたね。疲れがドッと来たのはその後でした。
小説丸
6年、ですもんね…。
武田
そうなんです。大学2年のときからずっと定期的に書き続けてきた作品なので。振り返ってみると久美子が成長したなぁ、最初の頃は何事も受け身だったのにずいぶん大人になったなぁ、としみじみ感慨深くて。
小説丸
はずかしながら、「ユーフォニアム」という楽器があるのを知りませんでした。
武田
一般の人にはほとんど知られていませんよね。ユーフォニアムは金管楽器の一種なのですが、吹奏楽を知らない人に言うと「何それ?」となる楽器の代表格なんです。
小説丸
はい。
武田
タイトルも当初はやっぱりメジャーなトランペットにしようか、いやトロンボーンに、と編集さんの間では紆余曲折あったようなのですが、私としてはあえてユーフォニアムを打ち出すことで、「お、この作家は吹奏楽のことを知ってるな」と伝わるかなと思って。
小説丸
言葉自体の響きも伸びやかできれいで、素敵なタイトルだと思いました。
武田
ありがとうございます。“Euphonos(よい響き)”というギリシャ語が語源なので、「響け!」という言葉をかけるとすごくしっくり来るんですよね。
小説丸
武田さんはどうやってユーフォニアムに出合ったのでしょうか。
武田
私自身も小5から中3までの5年間、金管バンドでずっとユーフォニアムをやっていたんです。
小説丸
なるほど! それでこれだけ詳しく。
武田
そうなんです。だからこそ「ユーフォニアムってこういう楽器だよ」と胸を張って伝えられたらいいな、という気持ちがありました。
小説丸
ご自身も、小さいころから音楽好きでしたか?。
武田
それがそういうわけでもなくて(笑)。
夏休みに時間が余って暇だからどうしようか、というとき、たまたま友達に「金管バンドに入ろうよ」と誘われたから入っただけで。
小説丸
(笑)。それが作家としての輝かしい未来につながるとは……。
武田
その前にもピアノを一応習っていたのですが、(利き手じゃない)左手がいつまで経っても上手くならなかった。
でも金管楽器ならピストンが3つしかないから、基本は右手だけで操作できる。そんなきっかけでユーフォと吹奏楽にドハマリしました(笑)。