1万円で買うのはどんな本?フォロワー数3万人超の音楽レーベル主催者、青野くんの本屋さんショッピングに密着してみた。
「何を読めばいいのかわからない」、「おもしろい本が知りたい」方におくる、読書好きからのアドバイス企画。本を読んだ先の体験を提供する天狼院書店で、人気音楽レーベル主宰者、青野くんはどんな本を買うのでしょうか。
書店に足を運んだものの、「何を買えばいいんだろう」とあれこれ悩んでしまい、結局何も買えなかった……という経験はありませんか? また、人は「せっかく買うからこそ、おもしろい本に出会いたい」と思うもの。そんなときこそ、読書好きの方の選ぶ本を参考に選んでみてはいかがでしょうか。
今回、P+D MAGAZINE編集部は、「本だけでなく、その先にある「体験」までを提供する次世代型本屋」をコンセプトとする、天狼院書店にご協力いただき、読書好きの方に「予算1万円のなかで、自由に、お買い物をしていただく」企画を実施しました。
その読書好きの方とは、以前松本清張ファンの座談会(【座談会】異なる世代のファンが松本清張を語る)でも登場いただいた、インターネットの音楽レーベル「Naimachi Record」を主宰する青野くん。彼のTwitterアカウントをフォローする人は3万人を超えており、コラム執筆やイベント出演といった活動は10代、20代の若い世代を中心に大きな注目を集めています。
「本は書店で買うことが多いです」と語る青野くんは、書店でどのような本を購入するのでしょうか。今回買った本を選んだ理由やこれまでの読書遍歴、読書初心者におすすめしたい作家や作品なども併せてお聞きしました。
「天狼院書店」って、どんな書店?
今回舞台となる「天狼院書店」は、2013年9月、池袋にオープン。本の販売はもちろん、部活やゼミといったイベントも随時開催されている書店です。まずはこの天狼院書店で働く今村有美さんに天狼院書店とはどんな場所なのか、お話をうかがいました。
––今村さんと天狼院書店の出会いをお聞かせください。
今村さん:私が天狼院書店の存在を知ったきっかけは、Facebookです。知り合いが“いいね”をしていた「劇団天狼院」の投稿を見たときに「映画の製作や朗読劇をやっている書店があるんだ」と驚きました。
––天狼院書店は本の配置で、特にこだわっているところはありますか?
今村さん:ひとつひとつの棚に変わったコンセプトがある点ですね。たとえば窓際の上部に設置されているこの本棚には、好きな本を熱狂的に語る読書会、「ファナティック読書会」で紹介された本を左端から順に並べています。
そしてこの区分けされた本棚はひとつひとつのスペースが「マンションやアパートに入居しているみたいに見えるよね」ということで「メゾン・ド・天狼院」と呼んでいます。各ボックスに持ち主、つまりオーナーがいらっしゃいます。オーナーの方が「今月はこれを推したい」と選ばれた本を入荷し、販売を行っています。
––オーナーの方によって選ばれた本が並ぶのですね。オーナーになるにはどうすればいいのでしょうか。
今村さん:ご購入額2,500円ごとにお渡ししているプレミアムカードを集めていただき、家賃として提出されたお客様がオーナーとなっています。中には同じ本を強くおすすめされる方も、バラバラに置かれる方もいます。本の選び方にはそれぞれのオーナーの個性が強く見られますね。
––そして店内ではなんといってもコタツが目を引きますね!
今村さん:初めていらっしゃったお客様、特に大学生くらいの方に「どうやってここを見つけていただいたのですか?」と聞いたときに、「池袋でコタツが置いてあってゆっくりできるところはないかと探していたら見つけました」と仰っていたことがありました。こちらは1年を通して設置されており、夏は中にサーキュレーターが入って冷やしコタツになります。
––表紙が隠されたまま販売されている本がありましたが、こちらはどういったコンセプトのものなのでしょうか。
今村さん:こちらはもともと天狼院書店の店主・三浦が「悔しいくらいに素晴らしい本がある。でも、この本の内容が天狼院書店の今後の方針にも関わっているから、もしもたくさんのお客様に読まれてしまえば取り組もうとしていることの数々が、全てばれてしまう」という本に出会ったんですね。「知られたら困るけど、それでも素晴らしい本を売らないわけにはいかない」ということから、タイトルを隠した状態で販売しているのがこの「秘本」です。その後も「次は出ないんですか」というお客様からの声が集まり、今は8代目になります。
––他店と比較して「ここだけは負けない!」というポイントはどこにありますか。
今村さん:イベントなど、新しいものを取り入れる新規性ですね。一般的に、本は、読むという体験から気づきを得たり、「何かやろう」って思い立ったり、心を癒したりすると思います。しかし、天狼院書店では本を読んだ先にあるところまでを提供しようとしています。たとえば、「写真を撮れるようになりたい」と考えたお客様が写真の本を買ったならば、「実際に写真を撮りに出かけましょう」と呼びかけてイベントを開く、行動に移すところまでをご提供しています。
––では、今村さんが今最もおすすめしたい本を教えてください。
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今村さん:まずは当店で殿堂入りとなっている1冊、『1坪の奇跡―40年以上行列がとぎれない 吉祥寺「小ざさ」味と仕事』です。吉祥寺にある和菓子店、「小ざさ」の本ですね。この本に書かれている、1坪で3億円を築き上げた経営理念は、天狼院書店の店主である三浦にとって経営の軸になっています。当店では最もおすすめしていますね。
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今村さん:そして『モモ』は私が子供のころから好きな1冊です。大人になった今読んでも、「忙しさから心に余裕をなくしてしまう、時間が奪われてしまう」という描写にはハッとさせられます。
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今村さん:『ストレスフリーの整理術』には、生産性を上げるための実践的なノウハウが入っていると思います。「ストレスを感じるのは、常に頭の中にやらなければいけないことがぼやっとあるため。まずはやらなければいけないことを全部書き出せ」ということが、「まずはペンを手に取る」というレベルでの細かい行動から解説されています。
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今村さん:『サクリファイス』は、天狼院書店において「小説を1冊紹介してください」と言われた際に必ず紹介しています。続刊では、登場人物は変わらないものの、メインとなる登場人物や舞台が異なっています。それでもシリーズを通して青春、ミステリー、スポーツとさまざまな要素がぎゅっと詰まった素晴らしい作品です。
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今村さん:最後におすすめしたいのは『私の嫌いな10の人びと』です。マスコミいわく「戦う哲学者」である著者による、「笑顔の絶えない人」、「みんなの喜ぶ顔が見たい人」が嫌いという1冊です。どれも「うっすら思ってはいるけれど、でも言っちゃだめだよね、こんなこと」と誰しもが心のどこかに抱えているものをズバッと言っているのが気持ちいいですね。ちなみに、「嫌いな10の言葉」というシリーズもあります。
––最後に、天狼院書店の今後の展望についてお聞かせください。
今村さん:天狼院書店は読書の先の体験を提供するというコンセプトを持っていましたが、さらに「人生を変える書店」をキーワードにやっていこうと考えています。
イベントなどに参加するために来られる方の中には明確に「ライターになりたい」という思いからいらっしゃったりもするんですけれど、何かモヤモヤしているものがあって、「次のステップに進みたい」と強く思っている方もいらっしゃいます。モヤモヤしている方たちに羽ばたいてもらいたいという気持ちもあって、「人生を変える文章講座」というライティングゼミをはじめとして、マーケティングゼミなどを考えており、本当に夢を叶えてもらおうと思っています。こうした「体験をさらに深めていく」コンセプトを今後はより強く押し出していきたいですね。
天狼院書店 「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618
FAX:03-6914-3619
<営業時間>
平日 12:00~22:00
土日祝 10:00~22:00
(次ページ:いよいよ青野くん登場! 青野くんが1万円で購入した本とは?)
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