むちゃぶり御免!書店員リレーコラム*第15回
読後スカッとしたい時に読む勧善懲悪なストーリー本
私は小心者だ。自分が正しいと思ったことに自信が持てない。
ましてや、人に「あなた間違ってますよ!」なんて、とてもじゃないけど言えやしない。
ただただ心の中で、悶々とするだけなのだ。思えば、なんとつまらない人間なのだろう。
子供の頃、おじいちゃんと一緒にテレビ番組の水戸黄門を楽しんだ。物語の終盤、印籠を見た悪代官が「ははぁー」とひれ伏す姿にスカッとしたものだ。
だけど私には印籠がない。できることなら、印籠が欲しいと思って生きてきた。そんな私の心を鷲掴みにしたのが、この一冊。
『不祥事』池井戸潤(講談社文庫)
ドラマ化もされたこの物語の主人公に、とことん惚れてしまった。とにかく、ストレートに気持ちをぶつける花咲舞から目が離せない。そう、彼女が持っている印籠は「正義感」そのものなのだ。
権力争いや、腹の探り合いなんて彼女の前では無用の長物。彼女の正義の炎は、燃え尽きることを知らないのです。隠し通せる不正なんてない!と、信念をもって生きるその清々しい姿や、忖度なんてものに何の意味がある?とばかりに啖呵を切る舞に拍手喝采。私の心にたまったモヤモヤもどんどん吹き飛んでしまうのです。
優柔不断な私でもいつかは正義を貫ける日が来るんじゃないかと、そんなことを思わせてくれるこの一冊。王道の池井戸作品です!
どうぞ、この本を読んでスカッとスキッとして下さい。
『不祥事』
池井戸 潤
講談社文庫
木曽由美子(きそ・ゆみこ)
大阪生まれ大阪育ち、名古屋で20年暮らして5年前に大阪に帰ってきました。ノリとツッコミ大好き書店員です。
【次のお題】
入院中のおばあちゃんに贈りたい本
【答える人】
紀伊國屋書店 京橋店 坂上麻季さん
本連載は、「〇〇な時に読む本」というお題で、書店員の皆様に「推し本」を紹介していただきます。〇〇部分は、前回執筆した方が、次の執筆者に対して提案します。