元祖マンガと呼ばれる国宝甲巻の全図を掲載 アート絵本『これが鳥獣戯画でござる』発売!

小学館あーとぶっくシリーズは、1993年刊行以来、『ゴッホの絵本』は36刷り、『ルノワールの絵本』は31刷りなど、毎年、版を重ねるロングセラーの美術絵本です。そんなシリーズに、日本最古のマンガと言われる「鳥獣人物戯画」が登場しました。動物たちが大暴れする楽しい世界は、子どもも大人も楽しめます。とりわけ人気の甲巻は、全図公開しているので必見です。

日本の国宝で、元祖マンガの「鳥獣人物戯画」

京都・髙山寺所蔵の国宝「鳥獣人物戯画」は日本が誇る名作。とりわけ動物が擬人化された甲巻を中心に、なかなか紹介されない乙巻、丙巻、丁巻も掲載。この国宝作品は、マンガの原点とも言われ、世界中から愛されている日本の宝。通常はその一端を見ることしかできませんが、この絵本では、惜しみなく甲巻全図を公開していて、巻きものの全貌がわかる構成です。カエルとウサギの相撲大会に、サルとウサギの水泳大会、そして最後は仏さまにお供もの競争。とにかく大笑いしながら、楽しみながら感性を磨いていく絵本です。さらに動物のキャラづくりの話、筆使いの話、鳥獣戯画の「なぞ」など、あらゆる角度から楽しめる解説つき。大人でも楽しめる絵本です。

イキイキした描写は何度見てもすごい。人間様顔負けの動物スポーツ大会! 

有名なカエルとウサギの相撲大会に始まり、弓矢対決では、弓が細竹でできていたり、的(まと)が大きなハスでできていたりと、細部まで作者(不詳)のアイディアを発見するのも楽しい絵巻物「鳥獣人物戯画」の甲巻。さながら人間様にも負けない動物スポーツ大会といった感じでしょうか。

大人気の甲巻を右から左へ見ていく楽しみ

巻きもの感が伝わる甲巻全図。「なるほど、こうなっていたのか……」と改めて知る大人も多いのではないでしょうか。誰にでも分かるような描写は、当時、お寺で勉強する小さな子どもたちに宮中で行われる行事を学ばせる目的で描かれたと言われています。まさにいまの学習教材のようなものだったかもしれないのです。実はこの名画、小学校と中学校で習う単元のひとつ。この絵本を学習教材としても利用できます。

珍しい乙・丙・丁巻も掲載!

甲巻に続いて生まれたのが乙巻。乙巻にはキリン、バクなど想像上の動物も登場し、まるで「動物図鑑」のような構成です。さらに時は流れ生まれた丙巻は、すごろく遊びなどをする人々が描かれた「遊びの解説書」、さらにその次の丁巻はお笑い人物像が描かれた「ドタバタマンガ」といった楽しさがあります。

小学館あーとぶっくシリーズとは

28年間、毎年増刷を重ね世界累計250万部を超える小学館を代表するこども向け絵本シリーズ。『ゴッホの絵本』『ルノワールの絵本』『モネの絵本』などの世界の名画に続き、『北斎の絵本』『広重の絵本』の日本の名画も刊行中。新刊も含め全16巻。


著者・結城昌子(ユウキマサコ)
アートディレクター、絵本作家。
小学館あーとぶっくシリーズをはじめ
数々のアート書籍を出版。子ども、大人を
対象にしたアートのナビゲーターとして活躍中。


小学館あーとぶっくシリーズ
『ニッポンのわらいの原点
これが鳥獣戯画でござる』
定価:本体1700円+税
4月1日発売
発売元:小学館
著者:結城昌子
AB5版40P

小学館のサイト
https://www.shogakukan.co.jp/books/09727709

初出:P+D MAGAZINE(2021/04/07)

◎編集者コラム◎ 『東京輪舞』月村了衛
カズオ・イシグロ 著、土屋政雄 訳『クララとお日さま』/自由のないAIの残酷さと哀切を淡々と描く