◎編集者コラム◎ 『永遠に解けないパズル』市川拓司
◎編集者コラム◎
『永遠に解けないパズル』市川拓司
今年の4月、『いま、会いにゆきます』の韓国版リメイク映画「Be With You いま、会いにゆきます」が全国公開された。主人公の巧役がソ・ジソブ、澪役がソン・イェジンという2大スターの共演だった。映画は6月現在も地方の映画館で上映中で、9月にはブルーレイ/DVDの発売が準備されている。
純愛映画は韓国がもっとも得意とするジャンル。期待に違わず映画の出来は、日本版と同様、優しい涙を誘うものだった。もちろん原作者の市川さんもご覧になって、とても喜んでおられた。公開初日には新宿の劇場で監督・脚本のイ・ジャンフンさんとともに舞台挨拶をされたのだが、二人は初対面にもかかわらず、まるで兄弟のように意気投合していたのが印象的だった。二人の魂のかたちは似ているのだろう──そんなふうに思った。
本作『永遠に解けないパズル』は、2017年7月に刊行した単行本『MM』の文庫化である。小学館での前作『こんなにも優しい、世界の終わりかた』に引き続き、これも市川さんの〈世界の優しさの総和を少しでもふやそうプロジェクト〉作品だ。
最近は、誰かを裁く話、罰する話ばかりを聞く。そう市川さんは言う。自分が書く物語はずいぶんと時代錯誤で、まったく流行らないかもしれない。そうも言う。それでも、人を傷つけない心、弱きを守る心、そういう心を描こうとするのが市川さんなのだと思う。
とりわけ子どもが犠牲になる事件の話を聞くたびに思うのは、大人たちは、自分が生きる使命を何だと思っているのかということだ。子どもというのは、この世界の未来にほかならない。子どもを犠牲にすることは未来を壊すことなのだ。それなのに大人たちは‥‥。
『永遠に解けないパズル』には、そんなテーマも込められていると感じている。
単行本から大きく変えたのは装画だ。『こんなにも優しい、世界の終わりかた』で、世界の終わりの印象的なシーンを装画として描いてくださったイラスト作家・くまおり純さんにお願いした。くまおりさんの描く女の子の顔は独特で、ファンならすぐにわかる。そんなアイコンとしての強さも期待した。
今回特別だったのは、モノクロで描いていただいたこと。依頼した際、モノクロの注文は初めてだとおっしゃっていたから、それも記念になったと思っている。
出来上がったイラストをご覧になった市川さんは開口一番、モモ(主人公)のほんとのイメージは映画「ペーパータウン」のカーラ・デルヴィーニュだったと語った。つまりこのイラストは、どんぴしゃだったらしい。