◎編集者コラム◎ 『一抹の真実』著/ジグムント・ミウォシェフスキ 訳/田口俊樹

◎編集者コラム◎

『一抹の真実』著/ジグムント・ミウォシェフスキ 訳/田口俊樹


一抹の真実

 これまで日本ではほとんど紹介されたことのないポーランドミステリー『怒り』が日本で刊行されたのが2017年。「日本語が読める全海外ミステリー読者は必読」「ポーランド恐るべしと言うしかない」……と各方面から最大限の賛辞を頂いた「中年検察官シャツキ三部作」の、これは完結編にあたる作品でした。

 著者は「ポーランドのルメートル」と呼ばれるヒットメーカー。そのスピーディーな展開、読者を右往左往させる大胆な仕掛け、そして残酷なのになぜか読者を笑わせてしまう独特のウェット&ドライな筆致は、確かにポーランドミステリーの凄さを証明するに充分なものでした。昨年には本国で映画化もされた第一作『もつれ』を刊行し、そしていよいよ第二作『一抹の真実』が上陸です。

 今回の大きなテーマは「レイシズム」。シナゴーグで発見された女性の遺体の側に、ユダヤ教の食の規定「コーシャ」で使用される刃物が落ちていたことから、古都サンドミエシュの人々は「儀式殺人では?」と騒然とします。そこに「欧州一ボヤく男」ことシャツキが登場して事件を捜査が始まるのですが、「法の番人」をモットーとし、あくまで真実を追求しようとする彼の妨げとなるのが、この街に古くから伝えられる迷信。眠っていた他民族への憎しみにいとも簡単に火がついていく様がリアルに描かれ、いま世界中で起きている不幸な出来事を重ねずにはいられません。

 そんな社会派ミステリーとしても読ませる本作ですが、なんと言っても最大の醍醐味は主人公シャツキのキャラ。前作で若い女性に心惹かれ醜態(可愛いとも言う?)を晒したシャツキ、どうも前作と本作との間に、妻に不倫がバレてしまったようです…! 離婚、そしてワルシャワからサンドミエシュへの「都落ち」。いたたまれなくなって自ら希望した地方勤務だけれど、現実には大好物の難事件なんて起きないし、可愛い娘とも離ればなれで、一人わびしく朝食を食べながら感極まって(?)号泣してしまう……なんてシーンも。

 日頃は「法の番人」の仮面を被っているくせに、本当は人間くささ溢れるこの中年男に共感必至のこのシリーズ、未読の方は他の2作も合わせてぜひ手に取ってみてください。「ポーランドミステリー沼」にハマって頂ければ幸いです。

──『一抹の真実』担当者より
 
HKT48田島芽瑠の「読メル幸せ」第20回
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