【傑作マンガ10選】文学を原作・題材にした人気作品たち。

小松左京の『日本沈没』、江戸川乱歩『パノラマ島奇譚』……漫画の原作・題材となった昭和の文学作品を一気に解説します!あなたはどれだけ知っていますか?

人気マンガ『文豪ストレイドッグス』。そのアニメ化が決定し、2016年4月からTOKYO MXほかにて放映されることになりました。「文豪×マンガ×アニメ」という掛け合わせが目を引きますが、一体どんな仕上がりのアニメになるのか、今から気になりますね!

マンガと言えば、日本の誇る文化コンテンツ。そのマンガ文化と、日本文学の伝統が交差するとき、一体どんな化学反応が起こるのでしょうか?

そこで今回は、日本文学作品を原作・題材にした、選りすぐりの傑作漫画10作品をご紹介いたします!

 

1. 横溝ブームの火付け役!名探偵・金田一耕助を再発掘した傑作

八つ墓村(影丸穣也)

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出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4253171486

終戦後、傑作推理小説を立て続けに発表し、一躍ミステリ界の寵児となった横溝正史でしたが、1960年代に入ると、ほぼ断筆状態となり、世間からも忘れられかけた存在になっていました。そんな横溝作品の再ブームのきっかけになったのが、1968年から『週刊少年マガジン』上で連載された影丸穣也版「八つ墓村」

落ち武者の呪いがかけられた村で、次々と起こる毒殺事件。狙われた一族の先代当主、要蔵は「村人32人殺し」という血塗られた事件を起こした当事者だった‥‥‥。オカルト・ミステリーの傑作として名高い原作の雰囲気に、「空手バカ一代」の作画を担当した影丸穣也の骨太な劇画調のタッチが新たな息を吹き込み、若者のあいだで大反響を呼びました。

1976年には、この人気に目をつけた角川春樹事務所が監督・市川崑、主演・石坂浩二の映画『犬神家の一族』をつくると、1980年代にまで続く金田一耕助ブームが巻き起こったのでした。

 

2. 本当はどんな人?文豪たちの生活を垣間見る。

私説昭和文学(村上もとか)

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太宰治、永井荷風、梶井基次郎、坂口安吾という、昭和の文豪4人の生き様をフィクションを交えながら綴った短編集。国語の教科書や彼らの作品からは見えてこないキャラクターが、とてもリアルに描かれています。特に太宰治に関しては自殺願望を抱える心の闇、これまでの恋愛遍歴など背景を丁寧に取り上げています。

作者の村上もとかといえば、「JIN-仁-」のヒットも記憶に新しい大ベテラン。歴史を題材に扱った群像劇的作風は、この『私説昭和文学』でもいかんなく発揮されています。文豪4人についての新たな発見や、これまでになかった捉え方に繋がるかもしれません。

 

3. これぞ前橋・ルネッサンス!人気漫画家の深い文学愛を知る。

惡の華(押見修造)

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思春期の行き場のない衝動を描く天才、押見修造の名を世に広めるきっかけとなった出世作。近代詩の祖、ボードレールの詩集『悪の華』を読み耽る中学生・春日高男は、箍の外れた人間模様をきっかけに、街中を巻き込む騒動を引き起こし‥‥‥。

この小説の舞台となっている前橋は、詩人・萩原朔太郎の故郷でもあります。同じく群馬出身で、中学一年のときに父親から朔太郎の詩集を与えられたという作者の押見修造は、朔太郎が前橋に感じていた八方ふさがりな閉塞感を、漫画という表現を用いて描ききったといえるでしょう。

いつの時代も「文学青年」といえば、周囲への優越感と劣等感のはざまで揺れ動き、読書と空想の世界へと逃げ込むイキモノ。悩ましい十代の日々を過ごした読者であれば、若かりし頃の自分の生き姿を見るような共感を覚えること必至です!

 

4. あの小松左京の人気SF作品を漫画化!

日本沈没(さいとう・プロ)

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あいつぐ巨大地震、火山活動の活発化‥‥‥「あと2年で日本列島は沈没する!?」そんな未曾有の危機を前にして、日本政府は日本人を海外へと脱出させる「D計画」を発動することに。

小松左京の原作がもつシリアスな雰囲気を存分に再現してみせたのは、ご存知『ゴルゴ13』シリーズの作者、さいとうたかをを中心として作った劇画プロダクション、さいとうプロ。SFならではの空想科学と、手に汗握るストーリー展開を、迫力あるマンガ描写が盛り上げていきます。

2006年から2008年までビックコミックスピリッツに連載された一色登希彦版『日本沈没』では、舞台が21世紀の東京に移し替えられ、物語内容にも21世紀的な科学館や国際情勢が盛り込まれています。日本の古典的SF作品が、うつろう時代のなかでどう解釈されたのかを知りたい人は、こちらもあわせて読んでみてはいかがでしょうか。

 

5. インターネット×『人間失格』の見事な化学反応。

人間失格(古屋兎丸)

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太宰治の「人間失格」をそのまま題材として、コミカライズするのではなく、漫画家“古屋兎丸”がインターネットで見つけた「人間失格」という日記サイトを、赤裸々に描く異色の作品です。「痛い日記」とネタにされていたサイトにあったのは“大庭葉蔵”という1人の男の写真と日記だった……と現代と文学作品を巧みにリンクさせている点が大きな特徴になっています。

舞台は21世紀の日本、見慣れた学園生活のなかで感じる環境との齟齬、そして葉蔵をとりまく現代的な堕落への誘い。そのどれをとっても「コミカライズ作品」という枠におさまらない新鮮な解釈であり、葉蔵の苦悩にあわせてぐんにゃりと歪む絵のタッチもまた、漫画でしか表現することのできないオリジナルな楽しみを与えてくれます。

原作小説では、東北の裕福な家庭に生まれた主人公がモルヒネ中毒に陥り、精神病院にいれられるまでの顛末が描かれていましたが、現代の葉蔵を待ち構えている堕落と破滅とはいったいどのようなものなのでしょうか‥‥‥。

 

(次ページに続く)

『明治の建築家 伊東忠太オスマン帝国をゆく 』
『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』