歴史・時代小説のオススメ作品を紹介

NHK大河ドラマ「真田丸」が好評です。真田幸村(信繁)を主人公に、真田一族の動乱と盛衰を描いたこの作品をきっかけに、「歴史もの」に興味を持たれた方も多いのではないでしょうか? 歴史を描いた作品は、いつの時代も根強い人気があり、長く読まれているため、絶版になりにくいものがほとんど。読んでおきたい、代表的な作品を紹介します。

教科書通りに勉強するだけでは、なかなか頭に入らない「歴史」。ところが、小説となると、これが面白いようにのめり込めるもの。主人公の波乱に満ちた人生や出来事を追うだけで史実を覚えることができ、その複雑な人間模様に投影された歴史のドラマに、どんどん引き込まれていきます。そんな歴史小説・時代小説の代表的な名作を紹介します。

戦国・幕末・明治…動乱の世を描いた大作が目白押し・司馬遼太郎作品

『梟の城』

梟の城書影

https://www.amazon.co.jp/dp/4101152012

新聞記者として在職中に、第42回直木賞を受賞した作品。これは、それまでの職から、司馬が作家に転身するきっかけとなった作品でもあります。司馬が初期に多く手がけた忍者小説のひとつに数えられ、組織のなかで生き、豊臣秀吉の暗殺を狙う葛籠重蔵と、伊賀を捨て武士として立身出世しようとする風間五平の2人の生き様を描いています。
徳川家康や服部半蔵、石川五右衛門など、実在した人物も登場するほか、忍者同士のアクションシーンの描写が高く評価されており、2度映画化されています。

『竜馬がゆく』

竜馬がゆく書影

https://www.amazon.co.jp/dp/4167105675

幕末維新を先導した、坂本龍馬(竜馬)を主人公とする長編。
竜馬が、19歳で土佐から初めて江戸に剣術修行へ出かける前日から、話が始まります。武市半平太や、桂小五郎との出会い、盗人の寝侍ノ藤兵衛の登場、そして、4隻の黒船が浦賀に来航したことで、竜馬の人生が大きく変わっていきます。竜馬が成長していくさまを、複雑な時代背景とともに描き、現代における「坂本龍馬像」を確立したとも言える名作です。

その他にも、司馬遼太郎の代表作として、『燃えよ剣』『国盗り物語』『坂の上の雲』『翔ぶが如く』など、壮大なスケールと迫力で描かれた作品が数多くあります。

幕末の混乱期を背景に、英雄の活躍をすがすがしく描いた名作の数々

『壬生義士伝』  浅田次郎

壬生義士伝書影

https://www.amazon.co.jp/dp/4167646021

幕末の動乱の中、尊皇攘夷の名のもとに、京都市中守護の名目で結成された新撰組の隊士で、名を吉村貫一郎という者がいました。「守銭奴」「出稼ぎ浪人」などと呼ばれた彼の一生は、
愚直なまでに「愛する者のために生きる」ことに徹していたのです。やがて、薩長戦争が始まり、新撰組は幕府軍とともに敗走。鳥羽・伏見の戦いを最後に吉村の姿は途絶えます。その後の真実が、語られることに…。家族への真っ直ぐな愛と、侍としての義に生きるために身を削るその姿を、稀代のストーリーテラー、浅田次郎が綿密に描き、2000年に、第13回柴田錬三郎賞を受賞。中井貴一主演で映画化もされています。

『宮本武蔵』 吉川英治

宮本武蔵書影

https://www.amazon.co.jp/dp/406196514X

1935年から1939年までの4年間、朝日新聞に連載されていた人気作。二刀流で名を馳せ、歴史上屈指の剣豪といわれた宮本武蔵が、一流の剣士となり、自己を確立するまでを描いています。そんな武蔵を慕うのが、幼馴染みのお通。二人は運命に翻弄され、すれ違いを繰り返します。武蔵の剣の技術はもちろんのこと、精神的な高みを求めて修行を重ねて行くさまや、お通との出会いや別れのドラマは、多くの人の心を掴んで離しません。現代に伝わる「宮本武蔵」のイメージを定着させた作品とも言えるでしょう。
映画化もされたほか、井上雄彦の人気コミック「バガボンド」の原作としても広く知られています。

『徳川家康』 山岡荘八

徳川家康書影

https://www.amazon.co.jp/dp/4061950231

1950年から、1967年までの間、地方新聞各紙に掲載された人気小説。現在も、ロングセラーとなっています。徳川家康の、生母・於大の方の縁談から、家康が逝去するまでの、70年余りを描いており、戦国武将がほとんどすべて登場することでも知られています。天下を統一して戦のない社会を目指そうとしていた三英傑でしたが、信長と秀吉は思い半ばで倒れ、最後に残った家康が苦心して安定した社会を構築する戦略と苦悩が、微細に描かれています。“タヌキおやじ”と呼ばれる一面もあったと言われる家康ですが、天下を統一して、幕府の基礎を作った大人物としての活躍と、戦略に対する苦悩などを描いた作品となっています。

おわりに

歴史小説・時代小説として広く知られている、代表的な作品のあらすじについて、いかがでしたか?
歴史が好きな人にはおなじみのロングセラー作品ばかりですが、いずれも、戦国の乱世を舞台に活躍する、ストイックな求道者とも言える英傑の姿が、リアルに描かれています。
戦国時代は特に人気があり、その群雄割拠の時代背景を力強く生き抜くさまなどから、現代では、ビジネスにおける参考書として愛読する人も多いようです。
史実を知るのはもちろんのこと、精神論や名言など、作品から学べることが多数あるからでしょう。歴史を知ることで、広がる世界があるかもしれません。ぜひ、手にとってみてください。

初出:P+D MAGAZINE(2016/09/24)

平岡陽明著『ライオンズ、1958。』が描く男達の人情物語。著者にインタビュー!
【作家としても大活躍】石原慎太郎のオススメ作品を紹介