今月のイチオシ本 【ミステリー小説】

『最後のページをめくるまで』
水生大海

双葉社 本体1400円+税

 それまで思い描いていた物語の様相が一変し、大いに驚嘆させられる悦び。ミステリーのなかでも、こうした「どんでん返し」や意表を突く急展開がお好みの向きも多いことだろう。水生大海『最後のページをめくるまで』は、そんな読者に強くオススメしたい一冊だ。

 五つの収録作はいずれも驚きと意外性を周到に狙ったものばかり。帯に「※絶対にページを後ろからは読まないでください」と注意書きがあるとおり、まさに〝最後のページをめくるまで〟予断を許さない展開が待ち構えている。

 元恋人の予期せぬ来訪に戸惑い、窮地に陥ることになる女性(第一話 使い勝手のいい女)。妻を手に掛け、葬儀場で火葬の時間を待ちわびる男(第二話 骨になったら)。現金の受け取り役〝受け子〟として詐欺の片棒を担ぐ大学生(第三話 わずかばかりの犠牲)。いきなり現れた若い女に、半年以内にあなたの夫と結婚すると宣言され面食らうキャリアウーマン(第四話 監督不行き届き)。ひとり息子を喪い、犯人への復讐に燃える母親(第五話 復讐は神に任せよ)。登場する五人それぞれが迎える、当人たちが想像もしなかった末路は、驚きの威力とあわせて読む者の心を様々に波立たせ、引っ掻き、鋭く射抜く。

 著者は軽やかで心温まるような作品も、ダークで人間の非道ぶりを突きつけるような作品も自在に紡ぎ出す多彩な作風が持ち味だが、本作では黒く乾いた魅力が存分に発揮されている。

 五篇すべて完成度が高く甲乙つけがたいが、あえて白眉を選ぶなら、本格ミステリ作家クラブ選「ベスト本格ミステリ2018」にも収録された、語りと余韻が忘れがたい第一話と、めくるめく展開の果てに黒く染めた物語を最後の最後でさらに黒く塗り潰すような容赦ない第三話を挙げたい。

 好評を博して映画化もされた、島田荘司選ばらのまち福山ミステリー文学新人賞優秀作『少女たちの羅針盤』から十年。節目のタイミングにふさわしい、著者にとって飛躍となる新たな代表作といえよう。

(文/宇田川拓也)
〈「STORY BOX」2019年9月号掲載〉
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