【ホームズ入門編】シャーロック・ホームズシリーズクイズ

海外ドラマや映画でも多くの派生作品が作られ、今なお人気を博している『シャーロック・ホームズ』シリーズ。作者であるコナン・ドイルとシリーズの主人公、ホームズに関するクイズを用意しました。ぜひ挑戦してみてください。

名探偵の代名詞である主人公が活躍、いつの時代もファンに愛される『シャーロック・ホームズ』シリーズ。1887年に第1作となる『緋色の研究』が雑誌に掲載されて以降、シリーズはもちろん数々の派生作品が誕生してきました。

そこで今回は、『シャーロック・ホームズ』シリーズの作者であるコナン・ドイルと主人公、ホームズに関する知識をもとにした、クイズを出題。「映画やドラマは好きだけど、原作を読んだことがない」という初心者から「ホームズに関する知識は誰にも負けない!」というシャーロキアン(※)まで、ぜひ挑戦してみてください。

※:アメリカや日本で『シャーロック・ホームズ』シリーズの熱狂的なファンを指す言葉。なお、イギリスでは「ホームジアン」とも。

 

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『シャーロック・ホームズ』シリーズの著者は、イギリスの作家、アーサー・コナン・ドイル。今でこそ、『シャーロック・ホームズ』シリーズの生みの親として知られるドイルですが、実は最初から小説家を目指していたわけではありません。

【第1問】

コナン・ドイルの本職とは、何だったのでしょうか。

A.測量技師
B.教師
C.医者
D.研究者

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答え:C.医者


 
ドイルはエディンバラ大学の医学部を卒業した後、船医として汽船会社に就職。乗船した船で行われる捕鯨や漁業を観察、楽しんでいましたが、マラリアにかかったことで船医の仕事を困難に感じた結果、退職します。

やがてドイルは大学時代の同級生から声をかけられて診療所を開業しますが、同級生とそりが合わず、仲違いを起こします。後に自分でも個人診療所を開業するも、満足な収入を得られず、医師として成功を収めることはできませんでした。

医者として鳴かず飛ばずのドイルは、患者が来ない時間を小説の執筆に充てるようになります。書いた作品をさまざまな雑誌社に積極的に送りますが、買い取られたのはわずか。原稿料はごく少額であったため、あくまでも小遣い稼ぎの域を出ませんでした。

「このまま短編を書き続けても、名前が掲載されないからその場限りになるし、買い取ってもらえない。ならば、長編を書いてみよう」と考えて方針を変えたドイルは、やがてシリーズ1作目となる『緋色の研究』を執筆します。

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出典:http://amzn.asia/3vEMcfO

まずまずの評判を得た後、雑誌でシリーズの連載が始まったところ人気が爆発。一躍名を馳せたドイルでしたが、実は『シャーロック・ホームズ』シリーズよりも本当に書きたい小説のジャンルがありました。

 

【第2問】

コナン・ドイルがもともと執筆したかった小説のジャンルはどれですか?

A.歴史小説
B.ホラー小説
C.恋愛小説
D.SF小説

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答え:A.歴史小説


 
重厚な歴史小説に価値を見出していたドイルは、自らが歴史小説家として評価されることを望んでいました。ドイルは『緋色の研究』発表後、1865年に起きたモンマスの反乱を題材にした歴史小説『マイカー・クラーク』を執筆、重版になりました。

とはいえ、ドイルが人気作家の地位を確立したのは、やはりホームズの存在があってこそ。世間に求められているものと自分の書きたいものに乖離を感じ始めます。

ホームズ作品が評価された理由のひとつは、作品の描き方がリアルだった点にあります。作品で語られる事件にあまりにも現実味があったからか、「作者自身も探偵なのかもしれない」と思い込んだ読者から現実に起きた事件の依頼が送られてきた……という逸話も残っています。

 

【第3問】

『シャーロック・ホームズ』シリーズで人気作家となったものの、ホームズの人気ぶりに辟易していたコナン・ドイル。「シリーズを終わらせてしまいたい」と考えたドイルの行動はどれですか?

A.原稿料をもとに診療所を開き、医者の仕事に専念した。
B.新聞にて断筆宣言をした。
C.原稿料を高くし、執筆の依頼を受けられなくした。
D.ホームズが死ぬ作品を書いた。

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答え:D.ホームズが死ぬ作品を書いた。


 
母親への手紙の中で、「いっそのこと、彼(ホームズ)を殺してこの狂騒から逃げ出したい」とさえ書いていたドイル。サインをねだる読者から「ドイルではなく、ホームズとしてサインを書いてください」と言われることも珍しくなかったそうです。それを踏まえると、あまり気持ちのいいものではなかったのでしょう。

ドイルはホームズが宿敵のジェームズ・モリアーティ教授と対決する『最後の事件』を執筆、格闘の末にふたりとも滝壺に転落した……という展開をもって完全にシリーズを終わらせようとしました。これにより熱狂的な読者から「お前の選択肢は、ホームズの生還か貴様の死しかない」と脅し文句の並んだ手紙が大量に届いたり、ホームズの葬儀があちこちで行われる、といった事態が起こりました。そういった事実からも、シリーズがいかに人気だったのかがうかがえます。

ドイルは最初こそ渋っていたものの、読者からの要望に応える形でホームズを復活させます。最終的には、ホームズを主役にした56作品もの短編小説と4つの長編を出版することとなりました。もしもドイルが医者として大成していたら作家の道を選ぶことはなく、また最初から歴史小説を書いていたらホームズはこの世に生まれていなかったかもしれません。ホームズは、数々の偶然が重なって誕生した存在だったのです。

 
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『シャーロック・ホームズシリーズ』の主人公は、天才的な観察力と推理力を持ち、世界で唯一の“顧問探偵”である、シャーロック・ホームズ。作品は、彼が解決に導いた事件を、ホームズの友人で、相棒であるジョン・H・ワトソンが記録した形で書かれています。ドイルがワトソンを語り手として登場させたのは、執筆に際して参考にした作品、エドガー・アラン・ポーの『モルグ街の殺人』に語り手がいたことが少なからず影響しているといいます。

後に名探偵となるホームズが最初に解決したのは、大学時代にできた唯一の友人、ヴィクター・トレバーの父親が遭遇した『グロリア・スコット号事件』でした。持ち前の推理力で見事に解決に導いたホームズに対し、トレバーの父親はこう言います。

「ホームズ君、私は君がどうしてこれを推論されたのか知らんのじゃが、しかし君にはこんな事の探偵は、なんでもないことのように私には見えるのう。――あなたはその方面をおやりなさるがよい。そうすればきっとあなたは何かを発見なすって、世界的な人物になれますぞ――」”

『グロリア・スコット号事件』より

この一言をきっかけに探偵業を志したホームズは、大学卒業後に探偵事務所を開業。ロンドンのベイカー街221Bにあるアパートで、共同生活を送るワトソンをときに巻き込みながら、事件の謎に迫っていくのです。

様々な事件を解決することから、ホームズがあらゆる知識に長けている印象を持つ方も多いでしょう。しかし、ホームズは地動説や太陽系の構成、イギリスを代表する歴史家の存在を知りません。

地球が太陽のまわりを回っていることを知らない人間がいるなどというのは、あまりにも途方もない話で、とても信じられなかった。

『緋色の研究』より

驚くワトソンに対し、ホームズはこう語ります。

「いいか」彼は説明しはじめた。「僕は人間の頭脳は、原理的に小さな空の屋根裏部屋のようなものだと見ている。そこに家具を選んで設置していかなければならないが、手当たり次第に、いろんながらくたを詰めこむのは、おろか者だ。最終的に、自分に役立つかもしれない知識が押し出される。よくても、ほかの事実とごちゃ混ぜになり、けっきょく知識を取り出すのが大変になる。腕のいい職人は、脳の屋根裏部屋に持ちこむべきものを慎重に選ぶ。仕事に役立つ道具だけを持ち込むが、その種類は非常に豊富で、ほとんど完璧な順序に並べる。脳の部屋が弾力性のある壁でできていて、ほんのわずかでも拡張できると考えるのは間違っている。知識を詰めこむたびに、知っていた何かを忘れるときが必ずやってくる。要するに、使い道のない事実で、有用な事実が押し出されないようにするのが、最重要課題になるのだ」

『緋色の研究』より

ここでホームズは自分の脳を「屋根裏部屋」に例えていますが、これはホームズシリーズを原案に、舞台を21世紀のイギリスに置き換えたドラマ『SHERLOCK』の、とあるシーンの元ネタです。ドラマでもホームズは、記憶の保管場所を“マインド・パレス(精神の宮殿)”と表現しています。そして、「使い道のない事実を知識に入れることで、推理のヒントを失ってしまう必要はない」という理屈によって、ワトソンに反論します。

 

【第4問】

事件の捜査には夢中になる一方、普段は風変わりな人物として描かれるホームズ。そんな彼の趣味ではないものはどれでしょうか?。

A.ヴァイオリンの演奏
B.ボクシング
C.読書
D.化学実験

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答え:C.読書


 
ホームズは天文学に関する知識だけでなく、文学に関する知識も豊かではないことにワトソンは気がつきます。実際に作中でホームズはポーの『モルグ街の殺人』における探偵役、デュパンについてこう述べています。

「シャーロックホームズは立ち上がってパイプに火をつけた。「君はデュパンと僕を比べる事で、間違いなくお世辞を言っているつもりだろう」彼は言った。「そこで一言言わせてもらえば、デュパンは非常に無能な人物だ。15分間何も言わずにおいて、その後、出し抜けに友人の考えに割り込んだ、あのいたずらは非常に派手で薄っぺらなやり方だ。もちろん、彼にはある程度の分析的才能がある。しかしポーが想像しているような非凡な人間では全く無い」

『緋色の研究』より

ドイルが『ホームズシリーズ』を発表する前、フィクションにおける探偵の代名詞は、デュパンとされていました。いわば、デュパンはホームズにとって先輩にもあたる存在ですが、「非常に無能」「非常に派手で薄っぺらなやり方」とこき下ろします。というのも、推理小説は当初、低俗なエンターテイメントであり、高尚な文学作品ではありませんでした。ホームズも一応は推理小説ということでポーの作品を読んではいますが、ワトソンは、それを「文学」の知識として見ていません。

余談ですが、架空のキャラクターが、実在する作品のことを話題にすることからメタフィクションの技法が使われています。ポーとドイル、それぞれのファンとしては、嬉しい共演といえるかもしれません。

(合わせて読みたい:“メタフィクション”って知ってる?小説用語を徹底解説

ホームズは、ドイルがシリーズを完結させる目的で書いた『最後の事件』で、宿敵のモリアーティ教授と滝壺に落ちてしまいます。後にホームズだけが復活することとなりますが、その生死をわけた理由は何だったのでしょうか。

 

【第5問】

ホームズとモリアーティが『最後の事件』で滝壺に落ちた後、ホームズだけが生き残ったとされる理由は、以下のどれでしょうか?。

A.武術を習得していたから。
B.理由は特になく、ホームズからも語られていない。
C.仮死状態にあったから。
D.泳ぐのが得意だったから。

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答え:A.武術を習得していたから。


 
ホームズが再びワトソンの前に現れたエピソード、『空き家の冒険』において、ホームズは生き残った理由を語ります。

「我々は滝の崖っぷちでよろめいた。しかし僕にはバリツという日本の格闘技の心得があった。これが役に立ったことはそれまでにも何度となくあった。」

『空き家の冒険』より

ここで、ホームズは架空の日本式の格闘技“バリツ”によってモリアーティ教授を投げ飛ばしていた……という驚愕の事実が明らかになります。

後世の研究では「柔術」のことを指しているのではないか、とも言われていたり、“バリツ”が本当に存在するものとして信じてやまない読者も少なくありません。なんとあの江戸川乱歩や英文学者の吉田健一を中心に、「東京バリツ支部」という研究団体が作られた、というエピソードも存在します。

架空の武術でさえも本気で信じ込むファンがいたように、ホームズシリーズは「本当にあるのかもしれない」とまで読者に印象付ける力があったのです。

 

おわりに

今なお読者だけでなく、作品を研究する団体までも存在する『シャーロック・ホームズシリーズ』。時代を超えて愛されるのは、読者にホームズや架空の知識の存在を信じ込ませるほどのディティールがあったからなのかもしれません。

シリーズ初心者のあなたもぜひ、原作を読んで緻密なストーリー描写に驚いてみてはいかがでしょうか。

 

【参考文献】
『コナン・ドイル伝』/ダニエル・スタシャワー(著)
『コナン・ドイル』/ジュリアン・シモンズ(著)

初出:P+D MAGAZINE(2018/07/19)

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