採れたて本!【国内ミステリ#38】

クイズをモチーフにしたミステリ小説といえば、日本推理作家協会賞を受賞した小川哲の傑作『君のクイズ』が決定版と言っていいだろう。そこに新たに届いた挑戦状が、金子玲介の『クイーンと殺人とアリス』である。
著者は2023年、『死んだ山田と教室』で第65回メフィスト賞を受賞してデビューした。事故死した男子高校生が教室のスピーカーに憑いて喋りだす……という、奇想天外な設定の青春小説だ。続いて『死んだ石井の大群』『死んだ木村を上演』などのユニークな作品を立て続けに発表しているが、最新作の本書は、古典的なクローズドサークルでの事件を扱っているという意味では、これまでの作品の中で最もオーソドックスな印象を受けるかも知れない。
クイズに特化した謎解きアイドル「Queen & Alice」のオーディション合宿が、帽子島という孤島の館「心臓館」で行われることになった。集められたのは、クイズ研究会に属する高校生の想空と七色、9年間アイドルのオーディションを受け続けていた真昼ら、二次審査を通過した8人。運営側は、館の主で総合プロデューサーの鯨井ら7人である。合宿のあいだ行われるクイズ対決を勝ち抜き、毎晩1人ずつ出る脱落者は迎えの船で本土に戻されるというのがオーディションのルールだ。
前半はこのクイズ対決がメインとなる。その駆け引きの中で、候補生8人の個性が明らかになってゆく。彼女たちの軽快なやりとりと、さまざまなタイプのクイズの進行のスリリングさで、事件など起きなくてもひたすら楽しく読める。
候補生の1人が「孤島に変な館とか、殺人起きるの確定っしょ! やべぇ上がる! クソ滾る! こういうのまじ憧れてた! 誰か殺されたらさ、あたし探偵やっていい?」と思わずはしゃぐような、いかにも本格ミステリらしい舞台設定のもと、真剣勝負ながらも平和なオーディションが進行するのだが、タイトルに「殺人」の一語があることから予想される通り、後半ではとうとう殺人事件が起こる。孤島とはいえ携帯電話を使えないほどの秘境ではないので、普通ならば警察に通報するところだが、常軌を逸した理由によってそうはならない。候補生たちは、クイズなどではない、生身の人間が被害者となった殺人の謎に挑まなければならなくなるのだ。
前半と後半のギャップといい、謎が解けてもまだ油断できないラストといい、一見オーソドックスながらも実は一筋縄ではいかない、著者らしいミステリに仕上がっている。
評者=千街晶之






