採れたて本!

「STORYBOX」のジャンル別オススメ本紹介記事です。

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採れたて本!【歴史・時代小説】
 梶よう子の新作は、明治時代に教育家、翻訳家、作家として活躍した若松賤子の生涯を追った歴史小説である。幕末に京都守護職に任じられた会津藩主・松平容保に従った藩士・松川勝次郎の長女として京で生まれたカシは、鳥羽伏見の戦いで京を追われ、会津城の落城も経験した。早くに母を亡くしたカシは、数え八つで横浜の生糸商の番頭・大川甚兵
採れたて本!【国内ミステリ】
 思い返せば昭和の頃には誘拐事件が頻繁に起きていた記憶があるけれども、昨今は監禁目的の場合はともかく、身代金目当ての誘拐は滅多に起きないのではないか。ちょっと前の刑事ドラマでは、逆探知の時間を稼ぐため犯人からの電話への応答を可能な限り引き延ばす描写がよく見られたが、通信解析技術が発達したため今はその必要がなくなっている
採れたて本!【デビュー】
 日本ファンタジーノベル大賞は、もともとジャンル・ファンタジー(いかにもファンタジーらしいファンタジー)のための賞ではなかったが、中断をはさんで2017年にリニューアルされてから5回目を迎えた今も、事情は変わらない。選考委員の恩田陸いわく、「ファンタジーはあくまでも手段であって、目的ではない」。というわけで、「日本ファ
採れたて本!【評論】
 本書は、現在の文化産業におけるコンテンツの「発信側」と「受信側」の認識落差の深みを可視化したことで大反響を呼んだウェブコラム記事を大幅加筆したものだ。ファスト映画に象徴される「粗筋と見所まとめ」じみたマニュアル的存在の優先的受容を「情報過多時代に観客が生き抜くための一種の必然であり、そこに旧来の本来的な、というか低効
採れたて本!【海外ミステリ】
 きみの言葉で聞かせてほしい。ゆっくりで構わないから。謎、推理、冒険。その全てが詰まったロンドンでの日々を。きみの言葉で語ってほしい。そう呼びかけてページを開けば、十二歳の少年、テッドはユーモラスに語り始める。シヴォーン・ダウド『ロンドン・アイの謎』(東京創元社)は、子供の視線から見た瑞々しい景色と、家族についての悩み
採れたて本!【エンタメ】
 鉄を生み出すために必要なものは、鉄鉱石だけではない。石炭を1000℃以上の高温炉で蒸し焼きにした原料も必要なのである。そうやって石炭を強固にした原料の名を、コークス、という。本書の主人公であるひの子は、炭鉱町の出身で、現在は東京で校閲の仕事をしている。非正規雇用で働く彼女は、仕事の合間に小説を書く。ひの子の両親は既に
採れたて本!【ライトノベル】
 周囲の人間がほとんどそのまま地元で就職するような東北の地方都市に生まれ、「分相応を心がけ」「身の程をわきまえ」て生きることを自分に課してきた高校三年生の真嶋正太。そんな彼が忍び込んだ夜の教室でクラスメイトの月森灯と遭遇するところから本書は始まる。こういう導入の場合、ヒロインの正体が吸血鬼だったり人外の化け物で、日常の
採れたて本!【国内ミステリ】
 例えば芦沢央の『許されようとは思いません』や『汚れた手をそこで拭かない』、阿津川辰海の『透明人間は密室に潜む』、曽根圭介の『腸詰小僧 曽根圭介短編集』、矢樹純の『夫の骨』や『妻は忘れない』等々、ミステリ界ではここ数年、高水準なノン・シリーズ短篇集が幾つも上梓されている。中でも、どんでん返しの冴えという点で白眉なのが結
採れたて本!【歴史・時代小説】
 菅原道真は、今も〝学問の神〟として信仰されているだけに、漢詩文集『菅家文草』の編纂や、多くの後進を育てた私塾・菅家廊下などが注目されがちだ。これに対し『あるじなしとて』は、政治家としての道真に着目した異色作である。八八六年。文人官吏として順調に出世していた道真は、突然、讃岐の国司に任じられる。地方の国司を数年ほど務め『塞王の楯』で直木賞を受賞した今村翔吾の受賞後第一作は、池波正太郎、司馬遼太郎、火坂雅志らが取り上げた人気の戦国武将・真田幸村を描いている。関ヶ原の戦いに勝利し豊臣家を滅ぼす機会を狙う徳川家康のもとに、二度も煮え湯を飲まされた真田昌幸の息子・幸村が大坂城に入ったとの報告が届く。長男の信之は家康に仕え、第二次上田合戦で徳
採れたて本!【ノンフィクション】
「メタバース」という電脳語が脚光を浴びている。バーチャル現実の本格拡張版というか、要するに「物理現実と対等といえる超仮想現実」のことで、各種知覚デバイスと情報空間のスペックアップがそれを可能にするのだ。現状、仮想通貨・NFTがらみで経済面から話題になることが多いメタバースだが、「マジでその中で暮らせる」さらに「環境を恣
採れたて本!【海外ミステリ】
 シャーロック・ホームズ。かの名探偵に憧れを捧げた作品は数多い。しかし、それだけにハードルの高い分野だ。今また、香港とインド、二つの場所から時を同じくして、ホームズへの新たなるラブレターが届いた。前者は莫理斯『辮髪のシャーロック・ホームズ 神探福邇の事件簿』、ホームズの事件と香港の時代性をクロスさせて、原典を一風変わっ
採れたて本!【デビュー】
 2003年に創刊された東京創元社の《ミステリ・フロンティア》は、新鋭を中心とする国産ミステリ専門叢書。梓崎優『叫びと祈り』、深緑野分『オーブランの少女』はじめ、新人のデビュー単行本をたくさん刊行しているのが特徴。最近だと、榊林銘『あと十五秒で死ぬ』や、笛吹太郎『コージーボーイズ、あるいは消えた居酒屋の謎』、明神しじま
採れたて本!【ライトノベル】
 大迷宮『千年白夜』には、どんな願いもかなえるという秘宝『星命結晶』を求めて数多の冒険者が集う。魔物の襲撃で滅びたマクタロード王国の姫『深紅の姫騎士』アルウィン・メイベル・プリムローズ・マクタロードもそのひとり。彼女の目的は、大秘宝の力で王国を再興すること。それと……彼女は一匹のヒモを飼っている。名前をマシューという。
採れたて本!【国内ミステリ】
 本格ミステリにおいて、フェアプレイを重んじることと、意外な真相を表現することとは、実は両立がかなり難しい。というのも、フェアであろうとして丁寧に手掛かりを配置し、謎解きのロジックも厳密であろうとすればするほど、読者が真剣に推理すれば真相が見えてしまうからだ。本格ミステリの歴代名作を思い浮かべても、論理性と意外性を両立
採れたて本!【歴史・時代小説】
『塞王の楯』で直木賞を受賞した今村翔吾の受賞後第一作は、池波正太郎、司馬遼太郎、火坂雅志らが取り上げた人気の戦国武将・真田幸村を描いている。関ヶ原の戦いに勝利し豊臣家を滅ぼす機会を狙う徳川家康のもとに、二度も煮え湯を飲まされた真田昌幸の息子・幸村が大坂城に入ったとの報告が届く。長男の信之は家康に仕え、第二次上田合戦で徳
採れたて本!【エンタメ】
 主人公は世界で一番有名な戯曲家──シェイクスピア。その名を知らない人はいないであろう歴史上の人物であるが、彼の史実には意外と謎が多い。本書は、シェイクスピア史において「劇作家になるまでの」空白の数年間にスポットライトを当てた一冊だ。イギリスの田舎で売れない俳優として暮らしていたシェイクスピア。彼は年上の女性と結婚した
採れたて本!【デビュー】
 身代金は10億円。その全額をクラウドファンディングで日本国民から募集せよ。なになにそれどういうこと? そんな脅迫状ってあり? と思った時点ですでに著者の術中にハマっている。新人のデビュー作としてはこのアイデアだけで合格だろう。というわけで、みごと第8回新潮ミステリー大賞を受賞したのが京橋史織の本書『午前0時の身代金』
採れたて本!【評論】
 何にせよ、大ブームになるとあっという間に消費され尽くして商品寿命が縮みがちな昨今、寸止め的に絶妙な盛り上がり感を長期にわたり維持しているジャンルに、実話怪談や都市伝説がある。これを文芸に含めるかどうかには議論の余地があるが、商品化する際に「語り手」の文芸的な創作力が必須なのは確かだ。実話怪談のトップランナーの一人で私