採れたて本!

採れたて本!【デビュー】
 身代金は10億円。その全額をクラウドファンディングで日本国民から募集せよ。なになにそれどういうこと? そんな脅迫状ってあり? と思った時点ですでに著者の術中にハマっている。新人のデビュー作としてはこのアイデアだけで合格だろう。というわけで、みごと第8回新潮ミステリー大賞を受賞したのが京橋史織の本書『午前0時の身代金』
採れたて本!【評論】
 何にせよ、大ブームになるとあっという間に消費され尽くして商品寿命が縮みがちな昨今、寸止め的に絶妙な盛り上がり感を長期にわたり維持しているジャンルに、実話怪談や都市伝説がある。これを文芸に含めるかどうかには議論の余地があるが、商品化する際に「語り手」の文芸的な創作力が必須なのは確かだ。実話怪談のトップランナーの一人で私
採れたて本!【海外ミステリ】
 これは一介のノワール読みからの忠告だが、「最後の仕事」なんて言葉を信頼してはいけない。理由は二つある。一つ、そいつは大抵、「最後」にはならない。二つ、本当に最後だったとしても、最悪の不幸ってやつは、必ず「最後」めがけてやってくる。ノワール読み必読の新刊、S・A・コスビーの『黒き荒野の果て』(ハーパーコリンズ・ジャパン
採れたて本!【歴史・時代小説】
 明治末の一九〇八年、木下杢太郎、北原白秋、長田秀雄、吉井勇、石井柏亭ら耽美派の芸術家が、〈牧神の会〉を結成した。宮内悠介の新作は、隅田川沿いの第一やまとで開かれる会合で語られる不思議な話を、〈牧神の会〉のメンバーが推理する多重解決ものの連作集である。団子坂に展示された乃木将軍の菊人形に刀が突き刺されたが、番人は刀を持
採れたて本!【ライトノベル】
 夢枕獏『小説 ゆうえんち ―バキ外伝―』が全五巻で完結した。『グラップラー刃牙』から『バキ』『範馬刃牙』『バキ道』と続く板垣恵介の人気格闘マンガのスピンオフとして『週刊少年チャンピオン』で連載された小説だ。ふたりにはすでに、夢枕の格闘小説の金字塔を板垣がコミカライズした『餓狼伝』があるが、今度は逆に夢枕が板垣作品のノ
採れたて本!【国内ミステリ】
 ミステリ史上、弁護士を主人公にした小説は大量に存在する(ちょっとしたミステリファンならば、余裕で数十冊くらいタイトルを挙げられるのではないか)。だが、たった一文字違いの弁理士となるとどうだろう。少なくとも私は、弁理士が主人公のミステリの先例を全く思い出せなかった。今年で二十回目を迎えた『このミステリーがすごい!』大賞
採れたて本!【エンタメ】
 恋愛ほど、「もしも」を考えてしまうジャンルはないのかもしれない。もしも自分がこうしていたら、あるいは、もしも状況がこうだったら、あるいは、もしも相手がこう言っていたら……。どうしても考えてしまうのが、恋愛なのではないだろうか。それはきっと仕事や勉強や趣味や育児や、その他多くの悩みごとに比べ、自分ではどうしようもない部
採れたて本!【海外ミステリ】
 お前と、お前の愛する者全てを殺す。殺人鬼の冷徹な脅迫から幕を開けるロバート・ベイリー『最後の審判』(小学館文庫)は、老弁護士トムを描く四部作の完結編にして、胸が張り裂けるような犯罪小説だ。ベイリーはこの四部作で、法廷ミステリーの中心街道を爆走してきた。一作目『ザ・プロフェッサー』では、仕事・私生活ともに追い詰められる
採れたて本!【デビュー】
 ハヤカワSFコンテストから、年間ベストテン級の斬新なサスペンスが登場した。近未来の首都高速を背景にした前代未聞のカー・アクション。なにしろ、主役はクルマなのに、人間はだれもそのクルマを運転していないのである。時は2029年。人間のドライバーを必要としない、レベル5の完全自動運転車が日本でも急速に普及している。その立役
採れたて本!【SF】
「英米北欧」以外の翻訳エンタメ小説も、ドイツのフィツェックやフランスのルメートルたちのおかげで知名度が向上したが、彼らの作品は英米圏でも通用しそうな基本的センスと洗練度を有しており、文体レベルでのジビエ的な「お国柄」野趣にいささか欠ける面がなくもない。かといって、ガチのジビエ小説は得てしてオチもネタも「所詮はローカルレ
採れたて本!【歴史・時代小説】
 源平合戦から鎌倉初期は歴史小説の激戦区の一つになっているが、今年の大河ドラマが人気脚本家の三谷幸喜が手掛ける『鎌倉殿の13人』ということもあり、昨年は、周防柳『身もこがれつつ 小倉山の百人一首』、武内涼『源氏の白旗 落人たちの戦』、奥山景布子『義時 運命の輪』、伊東潤『夜叉の都』など力作の刊行が相次いだ。保元の乱に敗
採れたて本!【ライトノベル】
『KADOKAWA のメディアミックス全史 サブカルチャーの創造と発展』は鎗田清太郎『角川源義の時代』、佐藤吉之輔『全てがここから始まる』に続く KADOKAWA グループ三冊目の社史だ。一九八二年から二〇一八年までの歩みが同社で社長、会長を務めた佐藤辰男によってまとめられている。角川春樹から歴彦への社長交代劇から電子
採れたて本!【国内ミステリ】
 ある一家の年代記のスタイルで描かれたミステリ小説といえば、海外ではドロシイ・ユーナック『法と秩序』やロバート・ゴダード『リオノーラの肖像』、日本では桜庭一樹『赤朽葉家の伝説』や佐々木譲『警官の血』といった名作が思い浮かぶ。二○一四年に『サナキの森』で第一回新潮ミステリー大賞を受賞してデビューした彩藤アザミの最新作『不
採れたて本!【エンタメ】
「女の子たちが……、女性が夢見がちでいられる世界が本来のあるべき姿なんですよ」本書『らんたん』にはこんな台詞が登場する。しかし夢を見ることは存外難しい。夢を見ては破壊され、押し潰されるような世の中であっては、夢見がちになんてなれない。だからこそ実際に、女性も夢を見られるように尽力した人々が、日本にいた。本書はそんな物語
採れたて本!特別企画◇レビュー担当7人が自信をもって推す!2021年ベスト本
 未曾有のパンデミックで、自由に外出することがままならなかった2021年。人に会えず、家で過ごす時間が増える中で、あらためて本の魅力を実感した人は多いのではないだろうか。果てしない空想の世界へと誘ってくれる壮大な物語、弱った心や孤独に寄り添ってくれる優しい物語、怒涛の展開や謎解きに没入させてくれるスリリングな物語。