スピリチュアル探偵 第14回

スピリチュアル探偵 第14回
探偵への挑戦状か。
連載を読んだ(?)刺客登場!

 ありがたいことに、近頃は友人知人から「スピリチュアル探偵、楽しみにしてるよ!」などと声をかけていただく機会が増えました。同時に、何らかのネタを持っている人からは、「どこそこにこういう霊能者がいるよ」とタレコミがあったりするわけですが、先日、こんな思いがけないオファーがあったんです。

「『スピリチュアル探偵』を読んだ友人が、ぜひ友清さんにお会いしたいと言ってるんですが」
「おや、それはありがたいですが、なんでまた?」
「本人、前からいろいろ"視える"と言ってたんで、対決したいんじゃないですか」

 つまりは道場破りのようなものでしょうか。だとすれば、これはなかなか新鮮なアプローチです。こちとら本物の霊能者を探し始めて15年超。飛んで火に入る夏の虫とはまさにこのことで、一も二もなく「ぜひ!」と答えた次第です。

 それにしても……。インチキを茶化して描くことも多いこの連載を読んで、よくぞ挑んでくる気になったもの。よほど腕に覚えがあるのか、それとも向こうは向こうで単なる冷やかしなのか──。

 ともあれ、会ってみなければ始まりません。まだ世の中にパンデミックの気配が漂う前のことであり、都内にあるなじみのBARを指定して、一戦交えることと相成ったのでした。

〈CASE.14〉ついに来た道場破り──スピリチュアル探偵への挑戦状!

 その後、仲介者である知人を挟んで何度かやり取りを繰り返したものの、互いの予定がなかなか合わず、待ち合わせは夜の22時という不健全な設定に。もっとも、霊能者と対峙するにはふさわしい時間帯かもしれませんが。

 知人を通してあらかじめ伝えておいたのは、内容によってはこの連載でネタにすることもあり得ること。そして、カウンセリングを受けるつもりはないから料金を請求されても困る、という2点のみ。ただ、そもそもそういう商売をされている方なのかどうかも、この時点ではわかりません。

 僕は早めにカウンターの端に陣取って、適当にハイボールなどを呷り始めました。目の前には顔見知りのバーテンダーが立っていましたが、まさか「今からここで霊能者と対決するんですよ」なんて言えるわけもなく、「友達がちょっと面白い人を連れてくるらしくて」とだけ言っておきました。

 テーブル席を含めて20席程度の店内に、その日は6割程度の客入り。22時を数分まわった頃、仲介者である知人が小柄な男性を伴って現れました。

「遅れてすいません」とにこやかに言う知人の後ろで、無表情のまま突っ立っている男性。黒髪&おかっぱのルックスが、どことなくお笑い芸人のバカリズムさんを彷彿させるものの、あまり愛想のいいタイプではなさそう。こちらから「友清です、初めまして」と声をかけても、黙って曖昧な会釈を返すのみ。

 人見知りなのか、それともBARという空間に不慣れで戸惑っているのか。ともあれ、僕・おかっぱ・知人の順に着席しました。

バカリズム型おかっぱ男性の牙城に挑む

 自分が指定した店でもあるので、「何を飲みますか?」と2人を軽くエスコートする僕。合間に横目でおかっぱ男性をちらちら観察したところ、年齢はおそらく30代半ばくらいで、チェック柄のシャツにジーンズという服装からしても、今のところごく普通の人にしか見えません。

 2人が僕と同じ銘柄のウイスキーでハイボールを注文し、乾杯を済ませたところでセッションがスタート。しかし、どうも空気がぎこちない。とりあえず僕から口火を切りましょう。

「──ええと、もともとお2人はどういう関係なんでしたっけ?」
「大学時代のバイト仲間だったんですよ。僕は一浪してるので、年齢は彼のほうが1つ下なんですけど」
「へえ、じゃあわりと長いお付き合いなんですね。(おかっぱ男性に向けて)普段は何をされているんですか?」

 ここでようやく「別に、普通の会社員です」と、言葉らしい言葉を発したおかっぱ男性。つまり専業霊能者ではないわけです。

 それにしても、この無愛想な物腰はどうにかならないものか。もっと「『スピリチュアル探偵』、面白いっすねー!」、「いつも楽しみに読んでまーす!」みたいなノリを期待していた僕がアホみたいです。

 しかし、こちらもスピリチュアル探偵である以前に、ライターとして5000人超をインタビューしてきた20年選手。この手合いを解きほぐしていく作業には慣れているつもりです。

「お住いは?」
「××(駅名)のほうすね」
「なんだ、ご近所じゃないですか!」
「………」
「帰りは一緒にタクりましょうよ」
「………」
「僕、△△(地名)に住んでるんですよ」
「………」

 うーむ、我ながら口ほどにもない有様。ちなみにこの「………」は、決してガン無視されているわけではなく、控えめにうなずいたり、口元を「ほう」とひん曲げてみたり、ノンバーバルな相槌でやり過ごされている感じです。おかげでこちらから薄い言葉を繋ぎ続ける流れができあがってしまいました。

「お酒はよく飲むんですか?」
「……まあ、ほどほどに」
「普段、どのへん飲み歩いてます? やっぱ三茶とか?」
「いや、家かな」
「主に何を飲むんですか。ビールとか?」
「………(無言で頷く)」

ていうかこの人、いまだに名乗ってくれないんですけど……。

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友清 哲(ともきよ・さとし)

1974年、神奈川県生まれ。フリーライター。近年はルポルタージュを中心に著述を展開中。主な著書に『この場所だけが知っている 消えた日本史の謎』(光文社知恵の森文庫)、『一度は行きたい戦争遺跡』(PHP文庫)、『物語で知る日本酒と酒蔵』『日本クラフトビール紀行』(ともにイースト新書Q)、『作家になる技術』(扶桑社文庫)ほか。