文学的「今日は何の日?」【6/29~7/5】
あの名作が世に出た日。
憧れのヒロインの誕生日。
かの大作家の失恋記念日。
……そう、毎日が何かの記念日です。さて、今日は何の日でしょうか。
6月29日から始まる1週間を見てみましょう。
6月29日
シェイクスピアで有名なグローブ座が上演中の失火により全焼
1613年のこの日、ロンドンの劇場グローブ座ではシェイクスピアの歴史劇『ヘンリー八世』が上演されていました。第1幕第4場で舞台道具の大砲を撃ったところ、茅葺屋根などに引火して、グローブ座は全焼してしまいます。グローブ座の座付き脚本家で、株主でもあったシェイクスピアですが、この出来事により筆を折り、故郷のストラットフォード・アポン・エイボンに帰ります。20年間留守にした故郷で、長女の不倫疑惑、次女の夫の元恋人とのトラブルなどのスキャンダルに見舞われながらも、1616年4月23日に亡くなるまでこの地で暮らしています。
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4480045317/
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6月30日
自分に片思いをしていた娘を見舞った在原業平、娘が亡くなり物忌みをする
六歌仙の1人で、美男としても名高い在原業平が主人公だといわれる『伊勢物語』。第45段は、業平に恋をした娘のエピソードです。片思いを言い出せないまま病気になった娘は、いまわの際になって初めて、親に胸の内を打ち明けました。驚いた娘の親からの知らせで、見舞いに訪れた業平。ですがその甲斐もなく、水無月のつごもり(6月30日)に娘は亡くなってしまいました。死の穢れに触れた業平はそのまま娘の家に籠って物忌みをし、「行く蛍雲の上までいぬべくは秋風吹くと雁に告げこせ」(『後撰集』)、「暮れがたき夏のひぐらしながむればそのこととなくものぞかなしき」(『続古今集』)の2首を詠んだことが綴られています。
出典:https://www.shogakukan.co.jp/books/09658012
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7月1日
スペインを旅行中のヘミングウェイがフィッツジェラルドに初めて手紙を書く
1925年5月、パリにあるディンゴというバーで、アメリカ近代文学を代表する2人の作家、F・スコット・フィッツジェラルドとアーネスト・ヘミングウェイが出会いました。以来2人は、リヨンまで遠出をするなど親交を深めます。同年6月、妻ハドリーとスペイン旅行に出たヘミングウェイは、7月1日にフィッツジェラルドに宛てて手紙を書いています。「あすはパンプローナに行くつもり」で始まるこの手紙には、マス釣りを楽しんでいることや、彼の理想の天国についての軽口のような内容が綴られています。パンプローナはヘミングウェイの代表作のひとつである『日はまた昇る』の舞台です。
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7月2日
国宝金閣寺から出火――三島由紀夫『金閣寺』、水上勉『五番町夕霧楼』が生まれる
1950年7月2日未明、京都の金閣寺で火災が発生しました。消防が駆け付けたときにはすでに遅く、舎利殿(金閣)ほか、国宝や文化財など多数が焼失し、世に大きな衝撃を与えます。放火の容疑者として逮捕されたのは同寺の見習い学僧で、アプレゲール(戦後派)犯罪として大きな注目を浴びました。この事件を題材に、三島由紀夫が1956年に『金閣寺』を、水上勉が1962年に『五番町夕霧楼』を発表しています。金閣寺の美が持つ魔力にとりつかれ、幻想と心中した主人公を描く三島と、浄財で豪遊する高僧たちの姿に幻滅し、怒りから放火したとする水上。この機に読み比べてみてはいかがでしょうか。
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7月3日
消防隊組合のお祭りでソルティーニが目撃される――フランツ・カフカ『城』
プラハのユダヤ人家庭に生まれ、ドイツ語で創作を行ったフランツ・カフカ。その死後に友人の尽力で出版された未完成作品『城』は、測量士として城に雇われ、その城のある寒村にやってきたKが、城に入ることも許されないまま、城と村の掟に翻弄される姿を描きます。村では測量士を必要としていないと知り、城の役人クラムに会って話をしたいと焦るK。クラムに会うため、城と村の実情を探り続けるKは、城との連絡係バルバナスの姉妹にまつわる、ある出来事を知ります。それは3年前の7月3日、消防隊組合のお祭りの日、城の役人ソルティーニとの間で起きたことでした……。
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7月4日
ピクニックに出かけたルイス・キャロル、口頭で『ふしぎの国のアリス』を創作
1862年7月4日、ルイス・キャロルは、彼が暮らすオックスフォード大学学寮の学寮長ヘンリー・リデルの3人の娘たちとピクニックに出かけました。この道中、キャロルは即興で、10歳の次女アリス・リデルを主人公とした物語を創作します。キャロルとリデル家の姉妹たちの間ではよく行われていたことでした。この日のお話を気に入ったアリスは、物語を書き留めておいてほしいとキャロルに頼み、キャロルは手書き本『地下の国のアリス』を作ってアリスに贈ります。そしてこのピクニックから3年後の1865年、この物語は『ふしぎの国のアリス』と改題され、ジョン・テニエルの挿絵を入れて出版されました。今なお児童小説の名作として、世界中で愛されています。
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7月5日
ヘイスティングスがスタイルズ莊に到着する――クリスティー『スタイルズ莊の怪事件』
「ミステリーの女王」と呼ばれるアガサ・クリスティーが、1920年に発表したデビュー作『スタイルズ莊の怪事件』は、「灰色の脳細胞」ことエルキュール・ポアロのデビュー作でもあります。第一次世界大戦で負傷し帰還したヘイスティングスは、旧知のジョン・カベンディッシュに出会い、彼の招きで7月5日にスタイルズ荘を訪れます。ジョンの義母エミリーと年下の夫アルフレッドの他、ジョンの妻メアリー、弟ローレンス、それにエミリーの友人の娘シンシアなど大勢が暮らすこの邸宅で、17日深夜、発作を起こしたエミリーが急死。毒殺を疑うヘイスティングスは、当地に滞在中のポアロに捜査を依頼します。はたして、エミリーの死の真相は……?
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4151300015/
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初出:P+D MAGAZINE(2020/06/29)