特別対談 松浦弥太郎 × イモトアヤコ[第2回]

特別対談 松浦弥太郎 × イモトアヤコ[第2回]

 世界の津々浦々を駆けめぐり、苛酷なロケに果敢に挑む姿が共感を呼んでいるイモトアヤコさん。彼女がいまいちばん会いたいという松浦弥太郎さんにとことん訊く、大反響スペシャル対談。待望の第二回です。


松浦
夕食を摂る時間を五時と決めて、そこを基準に一日を考えています。それは今回のコロナ禍で更にしっかりやろうとしているんです。

イモト
はあー(感嘆)。すごいですね。

松浦
夕食のあと、三キロぐらい散歩します。

イモト
ご飯のあと?

松浦
はい。食べたあとに散歩して、シャワー浴びて、のんびりして、だいたい午後十時ぐらいに寝ちゃう。

イモト
わあ、良いですね!

松浦
そうすると朝、だいたい五時ぐらいに起きる。で、マラソンして。

イモト
すごい!

松浦
そこから仕事して、っていう感じなんです。昼はね、あんまり。食べたり食べなかったり。そんな習慣を、だいたい毎日繰り返しているんです。

イモト
とてもストイック。

松浦
なかでも一番大事なのは、食事です。

イモト
ああ、やっぱり、そうですよね。

松浦
イモトさんは「グルテンフリー」の生活をしているそうですが、僕もそれに近いんです。あと、僕の年齢だと最近はあまり必要ないと思って、ご飯をたくさん食べなくなりました。ほんのちょっと。おかずだけ。

イモト
基本はご自宅ですか。

松浦
はい。簡単につくれるものばかりです。あと、お酒も飲まない。

松浦弥太郎さん

イモト
あ、一緒だ!

松浦
今、こんな時だから、会食もほとんどないでしょう。だから、すごく楽ですね。大事なのは食事です。食事の時間と量。

イモト
自分の動きに合った量ですよね。メンタル面にも良い効果がありそうです。

松浦
食事を基準に一日を考えると、習慣化されていくんですよ。習慣化はメンタル的にとても良いな、と僕は思うんです。寝る時間、起きる時間がはっきりしている、ということ。サイクルが変わらない、ということ。ただ、イモトさんは難しいですよね、忙しく仕事しているから。

イモト
でも、海外ロケがコロナでなくなり、ビックリしたことがあります。「時差がないと、こんなに身体に好影響があるんだな」って。今の生活のほうが健康的で、プラス、食事を気を付けるようになりました。今、わたしがやっているのは、グルテンフリーに加えて、「オートファジー」。十六時間ぐらい、空腹になりきるんですね。以前は、食べたくないのに、なんとなく習慣で食べていましたが「お腹が空かなければ食べなくて良いや」って思うようになりました。今は午後八時ぐらいに食べて、次の日のお昼までは空けるようにしています。

松浦
なるほど。あと、運動だと思いますよ。朝は一時間走っています。

イモト
それはすごい!

松浦
一時間走りながら、(配信アプリの機能の)タイムフリーで聴くのが、イモトさんのラジオ!

イモト
あははは(笑)、嬉しいですっ!

松浦
走っていて楽しい。運動はすごく良いと思います。十分でも二十分でも良いので、汗をかくのが良いんじゃないかと思います。メンタル面でも。

イモト
たしかに。

「何になりたいか」ではなく「どんな人間でありたいか」を考える

イモト
わたしは二十一歳で海外ロケの番組に出るようになり、二十代はいろんな海外に行きまくりました。そこでいろいろな経験をさせてもらって。三十代になって、結婚もして、わたしを見てくださる方々の「パブリックイメージ」みたいなものと、「等身大の自分」が──、ま、なるべく素直に、ピュアに出しているんで、大きなズレはないんですけど──、それでもたまに、ズレを感じることはあるんです。自分のやりたいことと、皆さまの求めていることって、ちょっと違うのかな、って思う時もありまして。こういうお仕事は「見られてなんぼ」だから、見ている人が判断するもの。だから、見ている人が「芸人」だと思ったら「芸人」だし。

松浦
うんうん。

イモト
違うものだと思ったら、違うもの。それで良いと思っていたんですけど。今、ちょうど三十五歳。考え方を変えて、自分のやりたいことをやってみようかと考え始めているんです。海外ロケも、たぶんしばらくは行けないでしょうし。ただ、そういう時の一歩の踏み出し方って、何かあったりするものなのでしょうか。

松浦
僕、今でも考えることがあるんですけど、「何になりたいのか」みたいなことって、皆、悩むじゃないですか、若い人は特に。「お金持ちになりたい」とか「社長になりたい」とか。でも、そればかりを考え続けると苦しい。考えても環境がすべて調わないと、自分のなかで「思うままにいかないこと」だと僕は思うんですよ、何になりたいかを考えることって。

イモト
はい。

松浦
僕も若い頃は「何になりたいのか?」「何屋さんになりたいのか?」って考えていました。でも「こればっかり考え続けていたら、自分の人生がダメになる」と気づいたんです。それで、ある時からそう考えることをやめ、その代わりにこんなふうに考え方を変えました。「自分はどんな人間になりたいのか?」って。つまり、目標とする人間像について考えるようにしたんです。

イモト
人間像、ですか。

松浦
はい。そこには職業とか、立場とか、お金持ちだとか、まったくないじゃないですか。「どんな人間になりたいのか」ということを考えるようになった。「どんな人間になりたいのか」は、自分のライフイベントや、年齢と共に変わっていっても良いような気がしているんです。たとえば結婚したタイミングで考えたりとか、仕事が変わったタイミングで考えたり。でも、「自分はどんな人間でありたいのか」の、答えを自分が持てるか持てないか、っていうことが、すごく影響すると思う。それで良いような気がします。人生のコンセプトみたいなものですね。

イモト
実際に紙に書いてみたりするんですか。

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