特別対談 松浦弥太郎 × イモトアヤコ[第3回]

特別対談 松浦弥太郎 × イモトアヤコ[第3回]

 世界の津々浦々を駆けめぐり、苛酷なロケに果敢に挑む姿が共感を呼んでいるイモトアヤコさん。彼女がいまいちばん会いたいという松浦弥太郎さんに人生のこと、仕事のこと、コミュニケーションのことを訊く、話題のスペシャル対談の最終回です。


松浦
そうです。

イモト
ありがとうございます! でも、それが一番ですね。

松浦
ホントに小学校、中学校の頃からずっと。あのね、従いたくないんですよ。他人に従いたくない。それが僕の初心なんです。

イモト
確かに今の社会って、少しずつそういう流れになってきていますよね。自分で決めることが求められる、というふうに。

松浦
うん。そう思います。

イモト
松浦さんが小学生の時や、お仕事を始めた時って、今と比べると全然違う世の中だったと思います。それでも、時代に従わない生き方を続けていらっしゃることを尊敬します。

松浦弥太郎さんとイモトアヤコさん

松浦
みんな、従うことでストレスを感じたりとか、夢を失ったりしているわけですよね。でも「そんな必要ないよ」って思います。自分がどんな人間になりたいのかって聞かれた時には「従わない人間になりたい」、で良いじゃないですか。

イモト
良いです!

松浦
変わっているな、面倒くさい、って言われるけど、それでもかまわない。

イモト
ストレスが、それだけでだいぶ軽減されそう。ふふふふ。「従わない」。いいですね。

松浦
あっはっは。言うこと聞かないですみません(笑)。

イモト
でも、そう思われたほうが、お得といえばお得。

松浦
そうそう。自分で責任を取れば良いんです。そうしたら他人のせいにしないから。

イモト
たしかに。

松浦
そういう感じで「初心にかえる五十五歳」をやっています(笑)。自分でバランス取って、ちょっと転んでちょっとケガをする。

イモト
自ら転びながら。ふふふふふ。

松浦
バランスを取ろうとする人、みたいにね。

神様は面白くて楽しく生きている人が好き

松浦
イモトさんのエッセイに出てくる、イモトさんが好きな人たちって皆、素敵ですね。

イモト
あ、嬉しいです。そう思っていただけると。

松浦
僕、イモトさんにとって「天国じじい」の二代目になりたいです(笑)。

イモト
えええっ、ホントですか! 

松浦
二代目天国じじいを目指します。

イモト
いやいやいや、嬉しい! 相談したいことがあったら相談しても良いですか。

松浦
いつでも相談してください。

イモト
やったあ。嬉しい!

松浦
名刺をお渡ししますので。はい。

イモト
やったあ。えー! ありがとうございます。連絡してもいいですか?

松浦
どうぞ、どうぞ。いつでも。

イモト
じっくりお話できて、本当に楽しかったです。

松浦
お互い、力を抜いて生きていきたいですよね。

イモト
どんな自分になりたいか、今度ノートに書いてみよう。

松浦
意外と楽しいですよ。

イモト
あ、そうだ。これ、差し上げます。私のラジオのステッカー。

松浦
えっ、ありがとうございます。このステッカー、レアものなんですよね。自慢しよう(笑)。

イモト
いえいえ(笑)。

松浦さんから新刊をプレゼントされるイモトさん
松浦さんから新刊をプレゼントされるイモトさん

松浦
僕、前に、伊勢神宮で一番偉い神職の方とお話しする機会があったんですけど、その時に教えてくれた良い話があるんです。

イモト
何ですか? 気になる。

松浦
神様には、好みがあるらしいんです。そして神様に好かれると、一生守ってくれるんですって。

イモト
えーっ。

松浦
その方は、四十数年間、神職をしていて、「やっとわかった」って言うんですよ。「それを教えてあげます」って。僕が「それ、聞いたら絶対、他人に言いますよ」って言ったら、「いや、かまいません」って。神様には好きなタイプがいて、それは、まじめとか、一所懸命とか、働き者とか、そういうことじゃないっていうんですよ。そのタイプの人は、ずーっと神様が守ってくれる。何があっても最後まで助けてくれるらしいんです。二つあるんです。好きなタイプ。何だと思います?

イモト
何だろう。その二つ。気になる!

松浦
それは、「面白く」て、「楽しく生きている」人なんですって。

イモト
あー!

松浦
面白くて、楽しく生きている人は、神様が大好きで、絶対守ってくれるんだそうです。昔からお祭りがあるじゃないですか。あれは、神様に対して「わたしたち、面白く、楽しく生きていますよ」ってアピールしているんですって。

イモト
そういうことですか! 五穀豊穣とかもあるけど、それだけじゃなくて。

松浦
そうそう、そんな真面目じゃないお祭りって、あるじゃないですか。盆踊りとか。

イモト
そうか、「ほら、わたしたち、面白いでしょー!」って見せているんだ。

松浦
面白く、楽しく生きています、っていうのをやっているわけ。面白く、楽しく生きると、神様は絶対守ってくれるらしいですよ。

イモト
面白く楽しくですね。

松浦
そのためには工夫しなきゃいけないし、前向きに生きなきゃいけない。

イモト
たしかに。シンプルだけど深いお話ですね。

松浦
深いでしょう。

イモト
面白く、楽しく、シンプルで、そして「従わない」。

松浦
そうそう。他人の言うことを聞かない。

イモト
(笑)。でも、神様は見守ってくれる。面白い! 教えていただいてありがとうございます。みんなに広めます。広がっていくと、世の中も幸せになりそう。

松浦
そうそう。ポジティブに生きましょう。面白く楽しく。

イモト
ありがとうございます! 松浦さんの言葉は、とても優しくて、とても説得力があります。お会いして、改めて松浦さんのこと大好きになりました。楽しく人生を生きるヒントをたくさんいただきました。
 


松浦弥太郎(まつうら・やたろう)
1965年、東京都生まれ。エッセイスト。クリエイティブディレクター。(株)おいしい健康・共同CEO。「くらしのきほん」主宰。COW BOOKS代表。著書に『着るもののきほん100』『ふたりのきほん100』『今日もていねいに。』『即答力』ほか多数。『伝わるちから』は幅広い読者の共感を呼んでいる。

伝わるちから

『伝わるちから』
松浦弥太郎/著
小学館文庫

イモトアヤコ(いもと・あやこ)
1986年、鳥取県生まれ。2007年から日本テレビ『世界の果てまでイッテQ!』に出演。TBSラジオ『イモトアヤコのすっぴんしゃん』ではパーソナリティーを務める。ドラマ、舞台など俳優業にも活躍の場を広げる。2020年、初のエッセイ集『棚からつぶ貝』を上梓。

棚からつぶ貝

『棚からつぶ貝』
イモトアヤコ/著
文藝春秋

松浦さんとイモトさん

(構成/加賀直樹 撮影/田中麻以)
(ヘア/赤間賢次郎 メイク/久保田直美)
「本の窓」2021年7月号掲載〉

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