『あなたが殺したのは誰』刊行記念 まさきとしか × 黒木瞳スペシャル対談【後編】

黒木
 ところで、三ツ矢&田所刑事シリーズは、ふたりのキャラクターがしっかりしているから、書き進めやすいのでしょうか?

まさき
 書き進めやすいというよりは、三ツ矢にいつも助けられている感覚です。執筆を始めた段階では、作中の事件がどのように解決されるのか、作者の私も、まったくわかっていません。

黒木
 でも結論というか、着地点はあるのでしょう?

まさき
 一応あるんですけど、三ツ矢の行動によって、違うところに行き着くことが、たびたびです。編集者に提出したプロット通りに物語が進められたら楽かもしれないですが、楽な方を選んだら、それで終わりです。気持ちが苦しくなっても、三ツ矢に付き従って、彼がそう望んだ方向へ向かうしかありません。自分の小説なんですけど、自分が書いているのではないような気もします。後で読み返して、三ツ矢はいいことを言うなぁと、感心するときがあります(笑)。

黒木
 書いている間、三ツ矢が乗り移っているような感じですか。

まさき
 キャラクターの少し上から、俯瞰している感覚です。思考や行動が、その人物と違和感がないように、人間を大事にして小説を書いています。

黒木
 人間を大事に、いいお言葉ですね。

まさき
 結果、遠回りになってもいい。キャラクターそれぞれの人間像を考えることに時間をかけています。

黒木
 それは私の役者の仕事に通じるものがあります。撮影現場は監督がいて、セットも衣装も揃っています。それなのに、どうしても役の人物になりきれないことがあるんです。

まさき
 黒木さんほどのキャリアの方にも、あるんですね。

黒木
 以前、某作品の撮影で、どうしても役になりきれなくて、困ったことがあります。自分自身からかけ離れた役でもなかったのに、3日ほど撮影期間が過ぎても、もやもやした気持ちを抱えていました。でも、あるとき「あっ、○○(役の人物名)は風が吹いてる」と、閃いたように思ったんです。この人は風を感じて生きている。そんなイメージがぱっと浮かんで、「風に吹かれよう」という意識でセリフをしゃべるようにしました。すると、身も心も○○になることができたんです。

まさき
 すごい!  まず、「風に吹かれている人」という表現が、思いつかないです。それも、降りてきたんですか?

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萩原ゆか「よう、サボロー」第39回