いのうえまぎ

井上真偽

神奈川県出身。東京大学卒業。二〇一四年『恋と禁忌の述語論理』でメフィスト賞を受賞しデビュー。一八年『探偵が早すぎる』がドラマ化され話題に。

深明寺商店街の事件簿4兄弟編
6 戻ってきたスタッフの車を追跡する中、福太は無言だった。美音の最後の一言が、強烈に頭に残っていたからだ。山根さんが、亡くなったお袋の友達……? 学太も同じく無言。車内には、退屈してついにダウンした良太の寝息と、能天気な藤崎の鼻歌だけが響く。「あの人がお袋の友達って……学太、覚えてるか?」小声で訊ねると、学太は首を横に振った。「いや。全然。
深明寺商店街の事件簿4兄弟編
「だからさ、西洋料理店というのは、ぼくの考えるところでは、西洋料理を、来た人にたべさせるのではなくて、来た人を西洋料理にして、食べてやる家とこういうことなんだ。これは、その、つ、つ、つ、つまり、ぼ、ぼ、ぼくらが……。」がたがたがたがた、ふるえだしてもうものが言えませんでした。「その、ぼ、ぼくらが、……うわあ。」がたがたがた
深明寺商店街の事件簿 第2話後編
5 「私、長谷川さんとあまり面識ないんですよね」そう言って、ブルーのトレーニングウェアを着た女子が苦笑いをする。翌日の早朝、河川敷のランニングコース。話しているのは、例の書道部員の容疑者の一人、三年の井手走華だ。やや大人びた、中性的な顔立ちのショートカットで、すらりと背も高いので颯爽としたトレーニングウェアが似合っている。書道部というより陸上部のエースといった趣がある。
深明寺商店街_第2話
「下のほうに広場がある」と幸福の王子は言いました。「そこに小さなマッチ売りの少女がいる。マッチを溝に落としてしまい、全部駄目になってしまった。お金を持って帰れなかったら、お父さんが女の子をぶつだろう。
どんでん返しのオススメ……というとそれ自体ややネタバレになってしまうのが心苦しいところですが、自分の中では(いわゆるミステリでいう「叙述トリック」的なひっくり返しだけではなく)、単純に「ストーリーが意外な方向に進む」というのも広義のどんでん返しだと思っていますので、今回はそのタイプを中心に紹介していきたいと思います。
(前編のあらすじ)深明寺坂で交通事故が起きた。運転手は焼き鳥の串を喉に刺し死亡。唯一の目撃者は小学生の良太で、事故直後、車の屋根越しに人影を見たという。良太の様子に不審を覚えた兄の福太と学太
深明寺商店街
  1 「なんだ、この唐揚げ。めちゃくちゃ旨え」  弁当箱の蓋を開けるなり、貴重な唐揚げの一つが横からかっ攫われた。  声を上げる間もなかった。それどころか、盗っ人が
『ムシカ 鎮虫譜』
共感できる人たちの物語にしようと思いました  次世代を担うミステリー作家として注目される井上真偽が発表した新作『ムシカ』は意外極まりない内容だった。瀬戸内海に浮かぶ小島を舞台に、襲来す