恋愛の発酵と腐敗について

 さくら通り商店街というありふれた名前のアーケードに、様々な過去をもつ女たちが集い、やがて一人の男をめぐり、ありふれた騒動が勃発する。その一連をとおして女たちがどのようにふるまい何を思ったか、各々の面ざしを丹念に見つめた群像劇は、予想もしない結末へと向かう。二十九歳の万里絵は上司との不倫ののち会社を退職し、商店街の中程
伊藤さん×錦見さん対談
 太宰治賞出身で『きみはだれかのどうでもいい人』(小学館文庫)が異例のロングランヒットを続ける伊藤朱里さんと、同賞の「後輩」である錦見映理子さんがこの2月、ほぼ同時期に新刊を発表する。伊藤さんの『ピンク色なんかこわくない』(新潮社)は四姉妹ものの家族小説、錦見さんの『恋愛の発酵と腐敗について』(小学館)は不思議な三角関係を綴る恋愛小説……と思いきや、ページをめくるにつれて読み心地がそれぞれガラッと変わる。二作を軸に、互いの作品について語り合っていただいた。
錦見映理子『恋愛の発酵と腐敗について』
恋愛というレッテル 三十代まで、「恋」とは男女の性愛のことだと思っていた。異性と恋をして結婚し、子どもを産み育てるという「正しい道」を歩まねば、幸せになれないと思い込んでいた。みんなが迷わずにまっすぐその道を進んでいるように見えて、ひとり取り残されたように苦しかった三十代を終え、四十代半ばで小説を書くようになってから、「いつか恋愛小説を書いてみたいな」とちょうど一回り若い友達に話すと、彼女は言った。