福澤徹三

 ドン・ウィンズロウによる3部作『犬の力』『ザ・カルテル』『ザ・ボーダー』。いずれの作品も、暴力と硝煙うずまくメキシコ麻薬戦争のフィクションを凌駕した現実をベースに、麻薬王国の興亡を魅力あるサブキャラクターたちが極彩色に彩った強烈にハードで非情なノワール小説の傑作だ。そしてドン・ウィンズロウが新たな3部作の始まりに選ん
◎編集者コラム◎ 『羊の国の「イリヤ」』福澤徹三
「週刊ダイヤモンド」2021年9月11日号の記事から話を進めたい。ネットに掲載された特集ページの見出しは、まるで身も蓋もない。「貧困大国ニッポンの『階層データ』初公開! 全5階級で年収激減の格差世襲地獄」そして記事はこう始まる。「もはや、日本は経済大国ではなく、貧困大国になってしまったのかもしれない。」さらに、「日本の
◇自著を語る◇  福澤徹三『羊の国のイリヤ』
 これを書いているのは二〇二〇年四月二十一日、世界は新型コロナウイルスによる混乱の真っ只中にある。インフルエンザの十倍といわれる致死率に加え、感染予防のための行動自粛が経済を蝕み、恐怖と不安が渦巻いて
Ily_ya
正義のために悪に堕ちる  一億総中流といわれた昭和は遠くなった。  富める者はますます富み、貧しい者はますます貧する時代である。一説には、わずか六十二人の大富豪が全世界の富の半分を所有するという。富