幸村しゅう『私のカレーを食べてください』
私の体は、カレーで出来ている
小食で好き嫌いが多い私は、給食が大の苦手だった。
クラスに1人や2人、食べ切れなかった給食の残りを、机にしまい込んでいる生徒がいたかもしれないが、何を隠そう、あれは私のことだ。
きゅうり、トマト、ナス、梅干し、漬け物と、苦手なものを数え上げればきりがない。
「好き嫌いばかりしていたら、大きくなれないよ!」
世の大人たちから、散々そんなセリフを聞かされてきたが、現在、私の身長は170センチある。
女性としては背が高い方なので、たいていの服は丈が足りず、つんつるてんだ。図体だけ見れば、大型新人といってもあながち嘘ではないほど、私は立派な体に成長した。
いったい、何を食べてそんなにデカくなったのだ?
言わずもがな、その答えはカレーである。
偏食の私の食欲を刺激する食べ物は、カレーライスしかなかった。
そんな私がカレー小説を書いたのだから、(自分で言うのもなんだが)表紙から最後のセリフに至るまで、この本はカレー愛で満ちている。内容の良し悪しはさておき、それだけは断言することができる。
「最近の若者は、本など読まず、ゲームばかりしている」
ならば、ゲームより面白い小説を書いてやろうじゃないか!
実際、そこまで気負ったわけではないが、普段小説を読まない人たちにも読みやすい本にしようと、一口サイズ(17章)の段落構成にし、飽きさせない工夫を凝らした。
そして女の子が心の翼を広げるような、広げることは叶わずとも、飛び立つことが可能だと思ってもらえるような、そんな本にしようと決めた。
ひと昔前まで女性のサクセスストーリーといえば、綺麗になって金持ちに見初められるとか、好きな人に振り向いてもらうとか、外見を整え、男性に認められることが主流だった。
だが、自分の幸せを他人に委ねる時代はもう終わった。
年齢や性別は関係ない。もちろん国籍も肌の色も関係ない。現実はどうであれ、小説の世界ではそうありたいと私は思う。
好きなことを見つけ、自分の道を切り開いていく。誰であれ、その先には困難が待ち受ける。
だが転んで、傷ついて、泣きながらも一歩踏み出す勇気こそ、人生を輝かせるのだ。
心に希望が灯れば、人は前を向いて生きていける。
自分の道を見つけようと、もがいている人。それを支える大人世代の人たち。読書好き。読書苦手派。表紙に魅かれたカレーファン。本を読むのに理由はいらない。本は人を選ばない。
小説に込めた希望の灯が、多くの人の心に届きますように――。
幸村しゅう(ゆきむら・しゅう)
東京都生まれ。映画助監督、介護予防デイサービス兼鍼灸治療院の経営などを経て、 小説を書き始める。