櫛木理宇『逃亡犯とゆびきり』
シスターフッドな女たち
今回、小学館様からの初の単行本が発売される運びとなりました。まことにありがとうございます。
『逃亡犯とゆびきり』
このタイトルのとおり、逃亡中の殺人犯がメインキャラクターの1人で、テーマは「シスターフッド&シリアルキラー」です。
シスターフッド、なる言葉を聞くようになったのはここ5、6年のことだと思います。
女同士の友情、お互い特別でありながら百合とはまた違う関係、性愛を伴うことのない同性同士の堅い絆、というものです。
概念としては昔からありました。『テルマ&ルイーズ』のヒロイン2人、『ガラスの仮面』のマヤと亜弓さん、『エースをねらえ!』のひろみとお蝶夫人。近年では『オーシャンズ8』のデビーとルー、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のフュリオサと女たち、そして『虎に翼』の寅子と山田よね。
先立っては男同士の絆を指すブロマンスという言葉がありますが、シスターフッドはブロマンスより同性愛のニュアンスが薄いかな、と個人的には思っています。
彼女たちは同性愛者というわけではなく、彼氏なり夫なりを持つ者もいます。それでもひとたび友人に何かあれば、彼氏も夫も瞬時にほっぽり出し、万難を排して駆けつける──それがシスターフッドではないか、と勝手に解釈しております。
というわけで話を戻しますが、新刊『逃亡犯とゆびきり』は高校時代の親友である女2人の物話です。
2人は傍から見れば冴えない、陰キャでサブカルな青春を過ごしました。しかし本人たちにとっては、何にも代えがたい濃密な時間でした。
卒業後、主人公は進学のため上京。親友は就職。それ以後は会うこともなくなりますが、ある日、主人公は思いがけぬところで親友の名を目にします。それは親友が連続殺人犯として、指名手配されたというニュースでした。
そして月日は経ち、フリーライターになったはいいが今後の進退に悩む主人公のもとへ、1本の電話が入ります。それは逃亡中の親友からの、アドバイスとも言える奇妙な電話でした──。
とまあ、こんな感じで始まる話です。
主人公の名は世良未散。逃亡犯の名は古沢福子。連作短編形式で、まあまあ読みやすいかと存じます。
年末の移動のお供に是非1冊、何卒よろしくお願い申し上げます。
櫛木理宇(くしき・りう)
1972年、新潟県生まれ。2012年「ホーンテッド・キャンパス」で第19回日本ホラー小説大賞・読者賞を受賞。また同年「赤と白」で第25回小説すばる新人賞を受賞。「依存症」シリーズなどを手掛けるほか、『死刑にいたる病』『鵜頭川村事件』『少年籠城』『骨と肉』など著書多数。
【好評発売中】
『逃亡犯とゆびきり』
著/櫛木理宇