『あなたが殺したのは誰』刊行記念 まさきとしか × 黒木瞳スペシャル対談【後編】
『あの日、君は何をした』から始まった、三ツ矢&田所刑事シリーズが52万部超のベストセラーとなっている、まさきとしかさん。待望のシリーズ新作『あなたが殺したのは誰』刊行を記念した、俳優・黒木瞳さんとのスペシャル対談後編です。最新作で描かれる「バブル時代」の思い出から、作家と役者という表現者の意外な共通点まで、たっぷり語り尽くしていただきました。
対談【前編】はコチラ。
人物になりきるために降りてきた言葉
黒木瞳(以下、黒木)
もう少し『あなたが殺したのは誰』についてお話ししたいのですが、何を語っても、ネタばれになってしまうような気がして、難しいですね。
まさきとしか(以下、まさき)
ああ、たしかに。
黒木
印象に残ったキャラクターについても語りたいのですが、その理由を言うと、ネタばれになってしまうような。すごく綿密に構成されている小説なので、あんまり語らない方がいいかもしれない。ただ面白いのは、間違いないです!
まさき
リゾート開発の舞台となっている、鐘尻島のバブル期の描写は、いかがでした?
黒木
いろんな投資を期待して、開発計画が進められる地方の雰囲気は、リアルでしたね。バブルは結局、崩壊したから開発は中止。鐘尻島のように、一気に廃れてしまった街は、現実でも多かったでしょう。
まさき
私は札幌でバブル期のお祭りとは無関係に過ごしていました。ジュリアナ東京や、クリスマスに若い恋人同士が高級ホテルに泊まる都会の豪華な様子を、テレビでぼんやり見ていました。どこかもかしこも景気が良くて、みんな楽しそうにお金を使っているのが、当時の東京のイメージです。
黒木
完全に傍観していた感じ?
まさき
そうですね。浮ついた思い出は、何もありません。
黒木
私は結構、お祭りに浮かれていたタイプで、不動産を購入してしまいました。
まさき
本当ですか!?
黒木
当時は、まとまったお金があれば利息で暮らしていけるような、異常な景気でした。良くも悪くも将来への大きな希望があったんです。鐘尻島のリンリン村に集まった多くの人たちも、希望に満ちていたはず。幻想がバブルの盛衰に呑みこまれていく人々の実態が描写されていて、当時を経験した身としては共感することばかりでした。
まさき
私は本当に他人事として眺めているだけでしたけれど、こんな景気は普通じゃない、長くは続かないだろうと、ニュースを通して感じていました。
黒木
小説のご着想は、実際の事件や出来事からのことが多いのですか?
まさき
書き出すときは、スタートがふたつあります。ひとつはミステリーとして、どういう構成にするか。もうひとつは人間を通して、何を描きたいのか。ふたつの視点から構想を練っていくと、やはり実際の事件や出来事が参考になります。