『あなたが殺したのは誰』刊行記念 まさきとしか × 黒木瞳スペシャル対談【前編】
2020年発表の『あの日、君は何をした』から始まった、三ツ矢&田所刑事シリーズが52万部超のベストセラーとなっている、まさきとしかさん。ミステリーの書き手として注目される作家が、待望のシリーズ新作『あなたが殺したのは誰』を上梓しました。それを記念して、第1作からの熱心な読者だという、俳優・黒木瞳さんとのスペシャル対談が実現。芸能界きっての読書家として知られ、映画監督、文筆家としてもマルチな才能を発揮中の黒木さんと、一気読み必至の新作を完成させたまさきさんが、創作論や演技論など幅広いテーマについて語り合いました。
ずるいと感じるほど読者が引きこまれるタイトル
黒木瞳(以下、黒木)
まさきさん、お久しぶりですね。
まさきとしか(以下、まさき)
本当に、ご無沙汰しています。
黒木
『あの日、君は何をした』を刊行されたとき、私がナビゲーターを務めているラジオ番組にご出演いただきましたよね。素晴らしい小説を書かれた著者の方とお会いできて、光栄でした。
まさき
こちらこそ、ありがとうございました。あの番組で黒木さんに褒めていただいたおかげで、たくさんの方に読んでいただけるシリーズになりました。
黒木
いえいえ、畏れ多いです。作品の力があればこそでしょう。
『あの日、君は何をした』をきっかけに、ご著作を全部、読ませていただきました。『熊金家のひとり娘』『完璧な母親』『きわこのこと』『ゆりかごに聞く』など、まさきさんの10年間を旅してきました。
まさき
嬉しい。こんな幸せなことって、ないです。
黒木
最新作『あなたが殺したのは誰』も、読ませていただきました。すごく面白かったです! 三ツ矢&田所刑事シリーズ第1弾の『あの君』(『あの日、君は何をした』の略)から、タイトルが本当に絶妙ですね。展開が衝撃的で、「いったい、何があったの⁉」と、タイトルどおり内容に強く引きこまれます。
タイトル決めは、いつも工夫されているのですか?
まさき
実は『あの君』はもともと別のタイトルで、『鬼子母』 というのを考えていました。
黒木
なるほど。「あの人」が鬼子母だ、というお話ですね。
まさき
そうです。でも、何かしっくりきていなくて。あるとき道を歩いていると「あの日、君は何をした」というフレーズが、ふと浮かんできました。それで担当編集者に連絡したら、「それでいきましょう!」とすぐに決まって。
黒木
狙っていたというより、不意に降りてきた感じなのですね。
まさき
三ツ矢&田所刑事シリーズに関しては、いつもそうですね。あんまり考えず、例えばお茶碗を洗っているときとか、トイレに行っているときとかにふと、タイトルが浮かんできます。
黒木
そのタイトルが、本当に素晴らしいんです。第2弾の『彼女が最後に見たものは』も、今回の『あなたが殺したのは誰』も、タイトルで掴まれます。読んでいくうちに、タイトルの意味がわかる構成になっているんですよね。今作では「誰」の部分に心が揺さぶられ、読者としては、ずるいですよ! と言いたくなりました。
まさき
あはは。ありがとうございます。