田島芽瑠の「読メル幸せ」第81回

田島芽瑠の読メル幸せ

第81回


1月になりました🐍

新年明けましておめでとうございます。『読メル幸せ』も残り3回となりますが、本年もよろしくお願い致します。

この年末年始は、上京してから初めて実家へ帰省しました。実家には度々帰っているのでそんなに久しぶりではないのですが、親戚にはなかなか会えなかったりするので貴重なお正月になりました。久しぶりにおせちを食べたり、お屠蘇をしたりと、日本のお正月らしいお正月を過ごせて穏やかでした(おみくじは大吉でした)。今年もよい年にできるよう精進します。皆さんも素敵な一年になりますように。

  

今年最初におすすめしたい作品はこちら!

1月16日から発売される予定の福田果歩さんの『失うことは永遠にない』です。

「読メル幸せ」第81回

きっと誰もが感じることのある感情。子供の頃のあの感覚を、大人になってから感じる瞬間も思い出しては、感情移入して胸がキュッとなった作品でした。

主人公は小学5年生の奈保子。母の失踪をきっかけに、奈保子は父の実家に1人預けられることになります。認知症が進んできた祖父と2人きりで静かな夏休みを過ごしていたが、宿題も終わり持ってきた本も漫画も読み尽くしてしまった奈保子は、父からもらったお小遣いを持って本屋さんに行くことにします。その道中、気がつくと見知らぬ場所についてしまい、迷子になった奈保子は慌てて走り出します。家を出て一時間は経ったでしょうか、外はかんかん照りで、暑さと疲労にやられ熱中症気味になった奈保子は、その場にしゃがみ込みます。意識が遠のくのを感じ始めた奈保子に「なにしてるん?」と声をかけ助けてくれたのは、同い年ぐらいの女の子でした。その子は背が低く、身体は小さく痩せ細り、裸足で歩いていました。学校にも通ってないと語るその女の子の、自分とは異なる家庭環境に驚きながらも、彼女のことを知れば知るほど何処か自分よりも幸せそうで羨ましく感じられてくる。彼女達が幸せそうであればあるほど、壊したくなる。孤独という名の自分の中に住む悪魔と向き合う、ひと夏の物語。

「読メル幸せ」第81回

何かを壊したくなる衝動。誰しもが頭の中で想像した事があるでしょう。孤独とは何か、幸せとは何かを考えさせられました。周りが幸せであればあるほど、自分の幸せが見えなくなり、孤独を感じていく。もしかしたら、恵まれている環境にいる人ほど、人は孤独に感じるのかもしれない。誰かと自分を比べて何かが足りないと感じるようになる。欲はどんどん増えて、その度に嫉妬心が生まれる。奈保子が出会った女の子は、生活環境は苦しいものであっても、兄弟達の間に強い絆があり、愛があった。確かに私にも、彼女の方が幸せそうに思えた。奈保子はきっと、ただ愛されたかっただけなんだと思う。自分を見て欲しかった、必要とされたかった。お金で幸福は買えるかもしれない。だけど愛は、人の気持ちはお金では買えない。人として生きる上で大事な事を、彼女達に改めて教えてもらった気がする。

失うことは永遠にない。自分の感情とは時に厄介で、向き合いながら私達は進むのだ。いつまでもどこまでも。永遠に自分自身と向き合い続けることが人生なのかもしれない。自分とは、唯一無二のパートナーだと思う。これからも私は私に問い続けながら生きていく。自分を幸せにするために。

今年もよい本の旅を。田島芽瑠でした。

「読メル幸せ」第81回

(次回は2025年2月中旬に更新予定です)


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