伊藤尋也『小学生刑事』
「小学生刑事」100億円のハードボイルド少女
皆さん、女子小学生はお好きでしょうか?
――いえ、返事は結構。子供たちは日本の宝。愛らしく、元気で、日本の将来まで支えてくれます。男女関係なく嫌いな人などいるはずがありません。
昨今は性的な目で未成年者を見るけしからん人たちもいるとは聞いていますが、とはいえ未来を担うJS(女子小学生)が嫌いというのは、逆にとんでもない変態と言うべきでしょう。
さて、そんなJS大好きな小説丸読者にはお馴染み「警察小説大賞」に、昨年度の第2回募集にて、とんでもない作品が応募されてきました。
その名も「幼女刑事」。
お堅いイメージのある警察小説大賞に、よくもこんなタイトルの作品を送れたものです。いい度胸をしています。
ですが、中身はタイトル以上のインパクト! なんと本作はわずか7歳の女の子を主人公にした、本格ハードボイルドアクション小説なのです。
【あらすじ】
警視庁の裏金100億円を年間予算とする秘密エージェント〝幼女刑事〟八代ヒメ。
潜入捜査や拷問、銃火器の使用、果ては殺人までもが許可されている彼女の新たな任務は、都内で起こる連続少女変死事件の捜査であった……。
この〝幼女刑事〟ヒメが、とにかく可愛く恰好いい!
棒つきキャンディをタバコがわりに咥えながら、改造パトカーを乗り回し、軍用ライフルでヤクザの組長を狙撃する。街のチンピラを殴って脅し、拳銃片手に犯罪者の隠れ家に殴り込む。
――そんなバイオレンスな活躍を、小学1年生の女の子が見せてくれます。ありていに言って最高です。
キュートで、ちょっと生意気で、とびっきりにスパルタン。
しかも、この子、すごく上品な可愛さなんですよね。ロリコン作品的な雰囲気がなく、なんだか親戚の子供でも見ているような気持ちになる。
なのにバンバン人を撃ち殺す!
そのギャップに、すっかり参ってしまいました。このキャラ造型、女性読者にもウケるのではないでしょうか。
あと、この作品、文章も上手い。
スピード感と勢いがあって、びっくりするくらい気持ちよく読めます。ちょっとライトノベル的と言いますか。――なのにストーリーは意外にも重厚。油断していたら泣かされます。
ポップなキャラと軽快な文章、完成度の高いストーリーと、本作はいわば「キュートボイルド」や「ライトボイルド」とでも呼ぶべき新ジャンルの小説なのかもしれません。
さて、審査員たちから高い評価を受けながらも「よく考えたら警察小説じゃないな」と受賞を逃してしまった本作ですが――タイトルを「小学生刑事」と改め、このたび出版されることとなりました。
ちなみに作者は、この記事を書いている私です。そう、この記事は最初から宣伝であったのです!
皆様、キュート&ライトボイルド小説、誕生の瞬間をご覧あれ!!
伊藤尋也(いとう・ひろや)
1974年、岐阜県明智町(現・恵那市)生まれ。本作にて作家デビュー。専門学校の講師、市役所の非常勤職員、ゲーム会社のアルバイトなど職を転々としつつ趣味で小説を書き続け、本作を第2回警察小説大賞に応募。選考委員からの高評価により、出版に至る。