満園真木『BIRD』

満園真木『BIRD』

ふたつの時空に生きるバードの物語


 14歳の少女バード。彼女はいつとも知れぬ過去のヒマラヤと、現代の豪ダーウィンに生きている。
 ヒマラヤのバードは父親の借金のかたに売られるような形で望まぬ結婚を強いられそうになり、婚礼から逃げだして、幼なじみの少年とともに聖なる山への巡礼の旅に出る。
 ダーウィンのバードは病院のベッドで目をさますが、なぜそこにいるのか思いだせない。自分がガソリンスタンドで強盗を働き、警察官に肩を撃たれて運びこまれてきたのだと知らされ、何があったのか思いだそうとする彼女の脳裏に徐々によみがえってきたのは、強盗に至るまでの数日間のできごとの記憶と、ヒマラヤの村から聖なる山をめざして徒歩で旅をしていた前世の記憶だった──

 ダーウィンのバードは絵の才能に恵まれていて、幼いころからずっと同じ5人の少女を描き続けている。この5人が自分の生について何かを教えてくれるはずだという確信めいた思いに突き動かされたバードの行動が、冒頭の入院までの経緯につながってくるのだが、物語の鍵を握る5人の少女の謎が明かされると同時にストーリーは急展開し、バードの運命も大きく変わってゆく。その先に待ち受けるクライマックスでは、バードと少女たちの絆と連帯に胸が熱くなること請けあいだ。

 また一人称でも三人称でもなく、「あなた」という二人称で書かれているところも本作のユニークな点で、自分に呼びかけられているような気分になることで、読みながらバードの視点とシンクロして、彼女の目から世界を見ているような気分になってくる。さらに、バード以外の登場人物の視点から綴られる章でも、主人公のことが一貫して「あなた」と表現されていて、これらの章を読んでいると、その章の視点人物のことをバードと一緒に神の視点から俯瞰しているような不思議な気分にもなり、それがまた独特の読み心地を生んでいる。

 輪廻転生をめぐるファンタジーであり、バードの冒険と闘いのストーリーであり、少女たちのシスターフッドの物語でもある本作。希望と感動のラストをぜひ味わってほしい。

  


満園真木(みつぞの・まき)
東京都生まれ。青山学院大学国際政治経済学部卒業。翻訳家。訳書にB・バウアー『ラバーネッカー』『視える女』、L・ガードナー『棺の女』『無痛の子』『完璧な家族』『噤みの家』『夜に啼く森』、B・ライガ『さよなら、シリアルキラー』『殺人者たちの王』『ラスト・ウィンター・マーダー』、E・S・マンデル『ステーション・イレブン』、A・リーヴ『ハーフムーン街の殺人』、E・クラーク『ブレグジットの日に少女は死んだ』など。

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BIRD

『BIRD』
著/コートニー・コリンズ 訳/満園真木

採れたて本!【歴史・時代小説#37】
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